不都合な真実
残念ながら、それが日本の現状なのではないかと思ってしまう。
日本の公式見解はこうだ。
「日米地位協定は、アメリカが他の国と結んでいる地位協定を比較しても、特に不利ではない」
安倍総理のこの言葉が、このところ次々と出ている地位協定の各国比較で崩れていっている。去年のおわりには伊勢崎賢治氏と布施祐仁氏の共著である『主権なき平和国家』~地位協定の国際比較からみる日本の姿~(集英社クリエイティブ)が、さらに先月には沖縄県がドイツやイタリアでの現地調査の結果を公表、これらを読んでいくと日米地位協定が「特に不利ではない」どころか、「特に不利である」ことがわかってくる。
実は日本政府も現地調査をふまえた各国比較を行っている。ところが布施祐仁氏が去年、外務省に情報公開請求をしたところ、50ページのうち公開されたのは最初のページのタイトルだけ、内容は全て黒塗り、いわゆるのり弁で出てきたのだ。
やれやれ、と言いたくなる。黒塗りにしたのは不都合な真実がそこから見えてくるからなのだろう。
『ミッドナイト・エクスプレス』の主人公ビリーは、刑務所に入ったとき囚人仲間にこう言われる。
「ここに来たら、半病人になるか、ミッドナイト・エクスプレス(深夜特急)に乗るかだ」
深夜特急は脱獄を意味する隠語。ビリーは脱獄する道を選ぶ。
在日米軍の兵士は決して深夜特急に乗る必要はない。もし罪を犯しても、基地の中に逃げこんでしまえば、日本の警察が手を出すことは難しくなるからだ。そしてそのまま米軍機に乗って白昼堂々と母国に帰ることさえ出来るかもしれない。
日米地位協定が締結されてから今年で58年、不都合な真実は一度も改正されたことがない。
【本欄はTBSキャスターの松原耕二さんが沖縄での経験や、本土で沖縄について考えたことを随時コラム形式で発信します】