市長の「受け入れ」表明はなぜ今だったのか~陸自配備に揺れる石垣島

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「詭弁」「姑息」

 

中山市長が16年12月に手続き了承を表明した際、本紙を含む報道機関は「事実上の受け入れ表明ですね」と念を押した上でそう報道した。
しかし、その後、市長は「受け入れ表明ではない。受け入れ可否の最終判断は適切な時期に行う」「賛成、反対双方の意見を聞いて総合的に判断する」との発言に終始した。
陸自配備の是非が最大の争点となったことし3月の市長選でも、自らは陸自配備問題には一切触れず争点化を避け、報道機関に質問には前述の内容をくり返していたのだ。
今回の会見内容について、配備予定地4地区の自治会も加わる「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」から、「言葉のまやかし」「やり方が姑息」「市民を愚弄するもの」と批判が出るのは当然。配備を認めている市民からも「やり方が気にくわない」「正々堂々と受け入れるべきだ」と批判が出るのは当然だろう。

「配備計画案への協力体制を構築する」などと述べ、受け入れを表明する中山義隆石垣市長=7月18日午後、石垣市役所庁議室(八重山毎日新聞社提供)

 

アセス逃れ

 

防衛省は7月20日現在、配備予定先の用地取得にかかる測量など4業務の入札・開札を終えており、近く業務に入る見通しだ。測量面積は約47ヘクタール(38筆)。いずれも履行期限は11月30日まで。
同省は「遅滞なく整備が進められるよう万全の措置を講じる必要があるとの考えに基づく防衛省独自の判断」(中嶋浩一郎沖縄防衛局長)として2018年度予算で136億円を確保している。
中山市長から正式なゴーサインが出たため、公費支出に、地元の理解を得たという大義名分もつく。
一方で、今回の市長の表明は、10月1日施行の改正県環境影響評価条例(県アセス条例)の適用を逃れ、配備計画を円滑に進める狙いがある。
県アセス条例の対象事業はこれまで20項目だったが、改正で「土地の造成を伴う事業」(施工区域の面積が20ヘクタール以上のもの)を追加する。これに防衛省の「石垣島駐屯地」(仮称)が該当するのだ。ただ、経過措置として来年3月31日以前に実施した事業について適用されない。
県環境政策課によると、通常のアセスにはおおむね3~3年半の期間を要する。石垣島駐屯地に適用されると、この間は工事ができなくなり、配備計画に大幅な遅れが出る。
市長も会見で「条例にひっかかり、手続きが進められなくなること、国の計画自体が遅れることは、(市の)対応として良くないと判断した」と述べており、計画を円滑に進めるための表明であることを認めている。

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