保革の「真ん中」に立つ
「ほんとに僕なんですか」
翁長知事の死去から10日後の8月18日。沖縄県沖縄市内の事務所で、翁長氏の後継候補を決める「調整会議」の議長・照屋大河県議や新里米吉県議会議長と向き合った玉城氏は、こう切り出した。
翁長知事が後継に玉城氏の名前を挙げた音声データを「2回聞いて確認した」と告げる新里議長の説明を受け、玉城氏は知事選立候補の腹を固めた。
ただし、選挙態勢についてこう注文を付けた。
「前回翁長さんを応援した保守系の皆さんとつながりの深い方々がいないと、選挙は成り立ちません」
4年前に自主投票だった公明党沖縄県本部は今回、知事選立候補を表明している前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)と「辺野古」の是非には触れない形で8月20日に早々と政策協定を結んだ。「オール沖縄」を支えた経済関係者の継続支援も一部不透明な状況だ。
それでも玉城氏は、翁長氏の「指名」を重く受け止めている。
「(翁長知事とは)育ちは違いますが、目指していく方向は同じだと。そう考えていただき、僕の名前が出たんだと思うと、この上なく光栄なことだと感じています」
翁長氏は沖縄の保守政治家一家で育ったサラブレッド。対照的な生い立ちだが、2人はともに「戦後沖縄」を体現しているようにも映る。玉城氏は言う。
「翁長知事はかねてから僕のことを話題にするとき、『デニー君も戦後の沖縄を背負って、いろいろ難儀してこられたんだろうなあ』というふうなことをおっしゃっていたらしいです」
中央政界で小沢一郎衆院議員と行動を共にした玉城氏は、14年の衆院選で「オール沖縄」の推薦候補(生活の党公認)となり、翁長氏が応援に駆けつけてくれるようになった。玉城氏が共感したのは、同年の知事選で翁長氏が掲げた「イデオロギーよりアイディンティー」という旗印だ。
「保革を乗り越えてイデオロギーは腹八分、六分にして取り組もうと。保守の政治家でこんなことを言う人は、小沢一郎以外に聞いたことがない」
玉城氏は、保守政治家だけれども中央集権型の保守政治家ではなかった、との「翁長評」も挙げる。沖縄の歴史と先達の努力に敬意を払う、そのための保守でなければならない、と訴える翁長氏の姿勢に打たれたという。
沖縄市議当時、玉城氏は『沖縄タイムス』のインタビューに「私自身は、保守だ、革新だというスタンスではなく、是々非々で行動している」と説明。「保守系は生活者の視点」「革新は論者の視点」と指摘している。
中央政界を渡り歩いた今の立ち位置を問うと、「真ん中かもしれませんね」と答えた。