好奇心ゆさぶる沖縄の痕跡 ~「内なるボーダー」台湾と共通点

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さまざまなルーツ

 

外国から働きにくる人の姿が日常に溶け込み、外国人の存在抜きには社会が成り立たなくなっているという点は、台湾も日本も変わらない。しかし、人口に対する外国人労働者の割合は占める割合は、台湾では3%に達し、日本の約3倍である。とりわけ介護分野は外国人労働者の存在抜きには成り立ち得ない状況にまでなっている。水掛祭りがミャンマー出身者の互助的な集まりによって行われているのではなく、地元の新北市政府主催となっているのもこうした状況を象徴している。

台湾で働く外国人労働者約70万人のなかで最も多いのはインドネシアからやってきた25万人である。たとえば、休日の台北駅へ行ってみよう。すると、そこに大勢のインドネシア人が集まっているのを目にするかもしれない。台北駅に近い路地には、インドネシア料理を出す食堂もある。一軒や二軒ではない。休日の昼食どきには繁華街のように騒然としている。あるいは、町の中で、頭にヒジャブを付けた女性がお年寄りの座った車椅子を押しているところに遭遇するかもしれない。彼女たちはほぼインドネシア人とみていい。

地方都市の主要な駅に行くと、たとえばベトナム料理の店が目に入る。中に入ると、なかなか美味なフォーを食わせてくれることが多いので、筆者もこうした店をよく利用している。

「台湾の中の外国」とでも呼んだらいいのだろうか。そんな光景をしょっちゅう目にするのが台湾の「今」なのである。外国人労働者の受け入れについては、台湾でも議論がある。ツーリストとしては、その議論に入る前に、まずは新しい台湾の風景を探しにいくという旅のオプションを体験してみよう。そこに日本の何かをダブらせるのか、あくまで台湾的な風景として見るのか。内なるボーダーは、どうやら一筋縄ではいきそうにないのである。

内なるボーダーは、沖縄とも密接に関連している。米軍基地の存在は言うまでもないが、それ以外にも、たとえば南米やハワイに移民した人びとはどうだろうか。海外のウチナーンチュは、現地の社会との間に「内なるボーダー」を意識したり、そのボーダーを踏み越えたりしながら暮らしているはずだ。台湾のお隣にある八重山の場合、何代さかのぼってもご先祖様は八重山出身者という人ばかりが暮らしているわけではない。宮古や沖縄本島、台湾、本土などさまざまなルーツを持つ人びとが一緒に暮らしているのが八重山である。

社会の中にボーダーを見るのか/見ないのかは、人それぞれであろう。台湾のなかに沖縄を見つけようとする企ては、自らが培ってきたモノの見方を省察するチャンスを与えてくれる。【2018年8月5日付と同12日付の「毎日新聞」に掲載したコラムを加修正しました】

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