問われる日本外交の主体性
ー日米地位協定改定という課題について
宮城 今回の知事選で浮上したもうひとつの課題は、日米地位協定の改定です。これは玉城候補はもちろん、佐喜真さんも言っていましたし、自民党総裁選では石破さんも取り上げていました。公明党もです。
そもそも普天間返還合意は95年の少女暴行事件が発端ですが、これは暴行事件という問題の性格からいって、本来、地位協定の改定で対応すべき話だったし、当時の大田知事もそれを訴えていました。
しかし政府、特に外務省などは地位協定をいじりたくない。米軍も同様です。そこで普天間返還の話がでてきたという側面があるように思います。1996年の日米両政府による普天間返還合意は、橋本龍太郎首相による懸命の訴えが引き出したとされていますが、実はどこから出てきたアイデアなのか、今でもよくわからないところがあります。
結果として電撃的な普天間返還合意が、ある意味〝目くらまし〟となって、地位協定の問題が普天間返還合意になり、さらには代替施設が膨張して辺野古への新基地建設になってしまった。その意味では四半世紀を経て、ようやく本筋のところに戻ってきたともいえます。
翁長さんもいろいろ苦労されましたが、全国知事会にこの問題を持ち込んで、知事会が政府に対して地位協定の抜本的見直しを提言しました。これは非常に大事な話です。地位協定は本土ではなかなか話題になりませんが、最近、再来年の東京オリンピックに向けて羽田空港の増便をはかるため、米軍横田基地の空域を使いたいという日本側の要望に対して、米軍が難色を示していると報道されました。このような治外法権的な状況は、やはりおかしいのではないか、ということでしょう。
沖縄では米兵がらみの事件、事故が起きるたびに日米地位協定が問題になりますが、日米地位協定は1960年の締結以来、一言一句改定されていません。地元の反発や不満が高まることは、基地の安定的運用という面からも決して望ましいことではありません。地位協定改定という課題にも真剣に向き合うべきだと思いますが、それは決して「反米」といったことではありません。日本外交の主体性という問題なのです。