コーヒーを媒介にしたコミュニケーション
コーヒーに対する沖縄と台湾双方の関心の高まりを受け、沖縄県台北事務所(吉永亮太所長)は11月24、25の二日間、台北市内のカフェで交流のためのイベントを開いた。会場では、今回のイベントのために製作した沖縄のカフェマップを配布。沖縄へ旅した時に訪ねやすいようにという工夫だ。
県内のカフェ関係者の中にはすでに台湾側と関係を構築しているケースがある。台湾産コーヒーブランドのひとつ「阿里山コーヒー」を5年前から那覇市栄町市場の店舗で使用しているコーヒーポトホトの山田哲史氏(41)は今回のイベントで、卓武山農場と鄒築園という2種類の阿里山コーヒーを使ってエスプレッソを販売。
珈琲屋台ひばり屋(那覇市)は、コーヒースタンドのような屋台で注文を取り、その場でコーヒーを淹れる独自のスタイルで04年から那覇市内で営業する。店主の辻佐知子さん(46)はイベントにも身軽に参加してコーヒーを淹れに出張することがあり、台湾ではこれまでに台北市内の2カ所で合わせて3回コーヒーを淹れた。台湾との付き合いは3年前から。台北で偶然知り合った喫茶店の店主から誘われ、その店へコーヒーを淹れにいったのが最初の出張だった。
辻氏はコーヒーに対するこだわりのあり方を台湾と日本で比較しながら言う。「日本だと、ブラックやストレートのコーヒーをいかにうまく淹れるかという方向に行く。しかし、台湾ではアレンジや創作の方向へ進んでいく」。台湾ではこれまでに、ジンやかんきつ系フルーツの絞り汁を混ぜたコーヒーや、特別なクリームを載せたコーヒーを飲ませてもらったことがあるそうだ。「アレンジが多様で、自由度が高い」という印象だ。
次に台湾へコーヒーを淹れに行くのは来年4月を予定している。コーヒーを淹れるための台湾行きとしては4回目となるこの出張も、これまで懇意にしてきた台北市内の喫茶店で台湾のコーヒー好きに自慢のドリップを楽しんでもらうつもりだ。沖縄で活動する雑貨の作家も参加することにしており、カップなどとセットでコーヒーを媒介にしたコミュニケーションを試みることにしている。
沖縄県によると、17年度に台湾から沖縄を訪れた観光客は前年度比24・7%増の81万3000人で、過去最多。一方、県が9月に公表した17年度外国人観光客実態調査報告書によると、沖縄へ来たという台湾の観光客のうち、4人に3人(73・7%)は初めての沖縄旅行で、残りの4人に1人は沖縄を2度以上訪れていた。こうしたリピーターに新たな観光メニューをいかに提供するかが沖縄観光の課題のひとつだ。
沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の担当者は「台湾の観光客からは『沖縄には何度も来た。ほかにどこへ行ったらいいか紹介してほしい』という問い合わせを受ける」と話す。
吉永所長は「コーヒーだけのために沖縄へ来ることはないかもしれないが、沖縄旅行のきっかけにはなりうる。滞在日数を伸ばすことにもつながるかもしれない」と期待する。