平成の沖縄県知事と米軍基地問題

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これからの県知事の課題

 

かつて稲嶺恵一は、沖縄県知事の「やるべき仕事の七割が基地問題」で、産業・教育・福祉など「やるべきことができない」と嘆いた。歴代の沖縄県知事は、まさにこのようなジレンマに苦悩してきたのである。

近年、若者を中心に県民の意見も多様化し、基地だけでなく貧困や子育てなどへの関心が高まっている。2017年度に沖縄県が行った県民意識調査によれば、県の施策として重点を置いて取り組むべきことについて聞いたところ、1位が「子どもの貧困対策の推進」で2位が「「米軍基地問題の解決促進」であった。特に10代と20代では、「子どもの貧困対策の推進」、「魅力ある観光・リゾート地の形成」、「陸上交通網の整備」の順で重視されている。その一方で、在日米専用施設の七割が沖縄に集中していることについて県民の66.2%が「差別的だ」と考えていることも見逃すべきでない。今後の県知事には、対話を通して多様な県民の意見・関心を汲み取り、基地問題を含め全体として県内の課題解決に取り組むことが求められよう。

平成の時代は、日本政治や日本の安全保障政策も大きく変容した。特に歴史的な経緯を踏まえて沖縄に理解を示す中央の政治家がいなくなってしまったことが、日本政府と沖縄県の対立の大きな原因である。さらに、中国の政治的・経済的・軍事的台頭によって、日本政府の安全保障認識を厳しいものになり、それとともに政府の沖縄に対する姿勢も強硬なものになっていった。アジアでは経済面では発展し相互依存が進んでいるが、安全保障面では対立が深まっており、沖縄はまさにアジアにおける二つの側面から影響を受けているのである。アジアや日本政治の変化を踏まえ、沖縄のかじ取りをいかにしていくか、そしてどのように沖縄の声を日本政治に反映させるか、今後の県知事には難しい課題が残されている。

【本稿は、沖縄タイムス2019年4月25日に掲載された論稿を大幅に加筆したものです】

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