石垣島自衛隊配備論点

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条例制定請求は生きている

以上の3パターンを見ると、一見、石垣市の自治基本条例の場合、「常設型」なので、どう請求するのかその書式など詳細が定められていない以上、不備があるということで、自治基本条例に基づく住民投票の請求は、やりようがないということになりそうです。

しかし、石垣市の自治基本条例28条1項に基づく市民からの住民投票の請求は、石垣市の逐条解説にあるように、まず地方自治法74条1項に基づく、「○○の住民投票」の「条例」制定の請求として行わなければならないのです。

そして、市長は地方自治法74条2項に基づき議会に付議するけれど、市民が4分の1以上の連署を集めた場合、議会の意見に関わらず、つまり議会が否決したとしても、自治基本条例28条4項に基づき、市長は住民投票を実施しなければならないのです。

つまり、石垣市自治基本条例は、「『個別型』と『常設型』のミックス」という定め方なのです。このミックス型は、入り口として、住民投票条例制定請求という地方自治法に基づいた条例制定請求の方式ですので、別途、請求の方式や書式の様式などの詳細を定める必要がありません。言い換えれば、石垣市の自治基本条例が住民投票の請求に係る「所定の手続き」を別途定めていないということは不備ではないのです。

したがって、中山市長と棚原企画政策課長が言うような「地方自治法に基づく署名集め」とは別に、「自治基本条例に基づいた署名集め」という別の手続きなど当初から想定されていないのです。


1万4千を超える市民の連署による住民投票条例の制定請求は、「地方自治法に基づいた署名集めで自治基本条例の要件を満たしたもの」なのは明らかなのです。

なお、市長は住民投票に必要な経費は議会の決議が必要だからとも述べているようですが、地方自治法177条の義務に属する経費ですので、議会で否決されようが最終的に市長の権限で予算に計上し支出することができるので住民投票をしないことの理由にはなりません。

繰り返しますが、石垣市の「住民投票請求の入り口はひとつ」です。そして、市長は、議会の否決に関わらず、所定の手続(=投票日の決定、告示、選挙管理委員会への一部委任、投票資格者名簿の調整等法令による手続き)を経て、住民投票を実施しなければならない義務を負っています。

地方自治法による方式に基づいて1万4千を超える市民の連署により行った住民投票条例制定請求はまだ生きているのです。

これは、自衛隊配備に対して賛成であろうが反対であろうが、民主主義の根幹である投票権自体が違法に奪われているという問題です。これを許してしまうと石垣市の社会自体が崩壊してしまいます。民主主義は、いつでも・誰でも・どこにいても権利が保障されてこそです。今こそ声を上げるべきです。

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