石垣市自治基本条例の廃止議案をめぐる法的問題点

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石垣市議会与党が提案した石垣市自治基本条例を廃止する議案が16日、市議会12月定例会最終本会議で採択され、賛成10対反対11の賛成少数でかろうじて否決された。賛成が上回れば全国初の自治基本条例廃止となる異例の事態であった。この採択に至る経緯自体が民主主義及び権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である法の支配に反し極めて問題である。法的な観点から以下のとおり指摘する。

市当局の見解

驚いたことに、議会の答弁において、石垣市企画政策課長は自治基本条例2条(用語の定義)の「市」には「議会」も含まれるという逐条解説の記載は認めた上で、今回の議員の条例廃止の提案は、地方自治法(112条)に基づいた議案提案であるので、自治基本条例43条が定める「条例の見直し」(なお、廃止も見直しに含まれることは論を待たない。)において必要な「市民の意見を踏まえること」や、「審議会への諮問」は不要であるかのような解釈を示したことだ。

しかし自治基本条例43条は、少なくとも5年を越えない期間ごとに条例の見直しを検討することを定めたものであり、当初の条例案が「市民、事業者等及び市は、社会、経済等の情勢の変化に対応するため、この条例の不断の見直し及び検証を行い、将来にわたりこの条例を発展させるものとする。」としていたように、見直しとは、5年という定期的な見直し検討作業に関わらず、自治基本条例を見直す場合には、必ず同43条が適用されるのは明白なのである。企画政策課長の解釈だと議員のみならず、市長が地方自治法148条及び149条に基づいて自治基本条例の廃止条例議案を議会に提出した場合にも、自治基本条例43条は該当せず、市民の意見も、審議会への諮問も不要だということになってしまう。

何か市当局側は、議会及び市長の議案提案権を絶対視する解釈をしているが、基本的人権を保障し、住民自治の理念に適い、法令の趣旨・目的に沿うために議会及び市長の議案提案権に自治基本条例で市民の意見を踏まえること、審議会への諮問という手続きの前置を要求するのは、当然に許されるものである。

これは、自治基本条例43条が骨抜きとなってしまうような解釈が許さるはずがないことからも明らかであり、法令遵守義務を負う市当局の答弁の責任は重大である。

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