【おすすめ三点】
■首里城を救った男(野々村孝男著、ニライ社)
昭和初期の首里城大修理に尽力した関係者の功績をたどる
■首里城への坂道(与那原恵著、筑摩書房・中公文庫)
戦後の首里城復元に多大な貢献を果たした鎌倉芳太郎の評伝
■菜の花の沖縄日記(坂本菜の花著、ヘウレーカ)
15歳で沖縄に留学した石川県珠洲市出身の少女の手記
再建の本質的意義
10月末の首里城火災は、世代を問わず沖縄の人たちのアイデンティティを揺さぶった。
政府は早々に「国主導」の再建を打ち出したが、沖縄では「県民主導」を望む声がくすぶり続ける。沖縄を舞台にしたミステリー小説で知られる1992年生まれの作家、オーガニックゆうきもその一人だ。
11月2日付『沖縄タイムス』で「新時代の首里城」にふさわしい姿として、「沖縄人の思想を広く反映した再建の形」を提案。再建の本質的意義にこだわる前提として沖縄の「過去や現代の人々の思いと記憶」に心を寄せる。
「首里城はこれまで何度も焼失しては再建されてきた。何度も蘇った背景には、首里城を残したいという人々の強い思いがあってこそだ」
昭和初期に行われた首里城正殿の大修理の際、工事費の一部を負担するため、12000人余の那覇市民が寄付金を集めた当時の記事を発掘した野々村孝男は、『首里城を救った男』でこんな感慨を記している。
「当時の新聞を読むと、人々は食糧難に苦しんでいる。そんな中、首里城に寄せられた深い思いが、じんと、胸に伝わってくる貴重な紙面でもあった」