石垣住民投票裁判の判決(8月27日)を控え~裁判の経緯と争点の整理

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5.予算の確保

被告は、議会審議における予算確保を経ないまま、その承認なく市長の判断のみで住民投票を実施することは不可能と主張したが、原告らは、市長は自治基本条例28条4項における自らの義務を果たすために、地方自治法179条に基づき専決処分をなすべきであり、それにより予算確保が可能であると反論した。

6.石垣市と豊中市の住民投票の比較

以上のとおり、被告の対応は違法であり、被告は原告らの請求のとおり、石垣市平得大俣地域への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を実施すべきであると主張した。

なお、これらをわりやすく大阪府豊中市の場合と比較した下記のチャート見ていただきたい。石垣市自治基本条例は、逐条解説で〇〇の住民投票条例の制定について請求できるとあるように、大阪府豊中市自治基本条例のような常設の住民投票条例を想定しておらず、自治基本条例28条1項に則った住民投票の請求に関する固有の手続き規定は存在しないのである。したがって豊中市などのような常設の住民投票条例がある場合は入口は二つであるが、石垣市の場合、入口は1つなのである。そして所定の手続きとは、立法経緯からも、原告が示した条例案に基づき、投票の形式、資格者、投票日の告示、選挙管理委員会への委任、投票資格者名簿の調整等を含めた住民投票を実施するための裁量を伴わない規則制定等の手続きをいう。「議会の可決」という憲法94条違反となるような解釈はありえないというのが原告の主張である。

なお、石垣市自治基本条例に基づく住民投票請求の利点は、たとえ議会が否決した場合でも、4分の1以上の有権者の連署があった場合市長は住民投票を実施しなければならないというもので、これは議会の意見も市民の意見も両方聞けるという間接民主主義と直接民主主義の双方をうまく取り入れたものといえる。また豊中市のように入り口が二つあると、有権者の50分の1以上の署名が必要となる地方自治法74条1項の住民投票「条例」制定請求ではなく、議会の可決が不要な有権者の4分の1以上の署名となる相当ハードルの高い入り口である自治基本条例に基づく住民投票請求を選んだ場合、例えば4分の1に少しだけでも足りなかった場合、せっかく集めた署名はまったく無意味なものになってしまう。住民投票を求める有権者としても本当に4分の1以上集められるかどうかわからないにもかかわらず、入口として自治基本条例に基づく住民投票請求を選択することにはとても責任を感じ躊躇してしまうはずである。そこで、石垣市自治基本条例28条1項に基づく住民投票請求は、地方自治法74条による条例制定請求のひとつとして、入口は一つにし、仮に4分の1以上の署名を集められなかった場合でも、地方自治法に基づく個別の住民投票「条例」制定請求として議会に付議される(もちろんこの場合には、議会が否決した場合は署名の効力を失う。)ように設計したというのはとても合理的な立法趣旨として説明が可能である。


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