辺野古新基地「日米共同使用」の歴史的文脈【下】

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4.最近の動向

 2012年12月、自民党が政権の座に返り咲き、第二次安倍晋三政権が発足する。安倍政権は、中国に対抗するため、日米同盟の強化を進めていく。2015年に改定された「日米防衛力のための指針」では、平時から「自衛隊及び米軍の相互運用性を拡大し並びに柔軟性及び抗たん性を向上させるため、施設・区域の共同使用を強化」することが明記される。2017年8月の2プラス2の共同発表では、「相互運用性及び抑止力を強化し、地元とのより強い関係を構築するとともに、日本の南西諸島におけるものも含め自衛隊の態勢を強化するために、日米両政府が共同使用を促進すること」が確認された。

 近年、沖縄の米軍基地の共同使用が、日米双方から積極的に発言されている。2017年11月には、ニコルソン在沖米軍四軍調整官は、記者会見で自衛隊と米軍による「沖縄の米軍基地の共同使用が未来の形だ」と発言した。また前述したアーミテージらの超党派専門家たちも、2018年の日米同盟についてのレポートで、日米の基地の共同使用は、「同盟の戦闘上の効果や政治的持続可能性、資源の効率化を最大化する」として、その推進を提言した。そして、「最終的には、すべての在日米軍は日本の旗の立った基地から運用すべきである」と主張したのである。(Richard L. Armitage and Joseph S. Nye, et. al, More Important Than Ever: Renewing the US-Japan Alliance for the 21st Century, Center for the Strategic and International Studies, 2018)。

日本でも、自民党の中谷元元防衛大臣や長島昭久議員、国民民主党の前原誠司元外相らの超党派のグループは2020年7月に提言を発表し、その中で在沖縄の自衛隊・米軍基地の再編を目指し、「自衛隊が基地の所有・管理を行う在日米軍基地の共同使用(2-4-a)の拡大を促進する」ことを提言した(「新しい日本の安全保障を考える超党派議員の会」提言、令和2年7月30日)。

 最近、海兵隊は中国に対抗すべく、分散された小規模な部隊で重要な地点にある離島を占拠し、一時的な基地にして中国の海洋進出を阻止したり制海権を確保したりするという遠征前方基地作戦(EABO)を発展させている。バーガー海兵隊総司令官は、インタビューでEABOについて、「米軍は同盟国軍の間に分散し、米軍は同盟国軍とともにいる」ことで、「同盟国を安心させる」と述べている(USNI News , April 2, 2020)。

 海兵隊の新戦略は、自衛隊との基地の共同使用と親和性があるようだ。2020年9月に行われた日米の元実務家によるシンポジウムでは、グレッグソン元国防次官補は、特に自衛隊と米軍の基地の共同使用は、日米同盟の強化の重要なメッセージとなると述べている。また番匠元陸将は、日本の南西防衛態勢と海兵隊の新戦略を一致させるため、基地の見直しが必要であり、「それは特に沖縄の自衛隊と米軍の基地の共同使用の構想に集中するべきである」と述べている(New Force Design for the Marine Corps and its Implications to the U.S-Japan Alliance, Sasakawa Peace Foundation USA)。

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