辺野古新基地「日米共同使用」の歴史的文脈【下】

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おわりに

 ここまで見たように、冷戦終結以降の今日までの日米同盟の強化とともに、沖縄における米軍と自衛隊の基地の共同使用は一貫して進められてきた。辺野古新基地の米軍と自衛隊の共同使用をめぐる計画は、こうした文脈の上に理解されなければならない。

冷戦終結以降、一方では中国の台頭や北朝鮮の核開発など東アジアの安全保障環境の悪化に対して米軍と自衛隊の協力強化が必要だと考えられた。他方では、沖縄から米軍基地に対する反発の声が高まり、日米両政府は対応に迫られた。日米の基地の共同使用は、日米の相互運用性の向上=軍事的一体化とともに地元への基地負担軽減よって、この二つの要請を同時に満たすものと考えられたのである。

 しかし、近年は、沖縄の基地の共同使用において、基地負担の軽減よりも、日米防衛協力の強化に比重が置かれている。特に民主党政権以降、沖縄基地の共同使用は南西防衛態勢の強化の下に明確に位置づけられた。その最たるものが、今回明らかになった、沖縄県民の反発の強い辺野古新基地の日米共同使用計画であることはいうまでもない。

同様に、沖縄の基地の共同使用が、米軍基地を自衛隊が使用するという2-4-aの形式で進められていることも問題である。2000年代初頭の在日米軍再編協議までは、日本側では、沖縄への基地負担の軽減のため、米軍基地を自衛隊に移管した上で自衛隊基地を米軍にも使用させるという2-4-bの形式での基地の共同使用を進めようという考えもあった。しかし、日米地位協定の制約や米軍との一体化という目的のために、これ以降、米軍基地の中に自衛隊が入っていくという形で基地の共同使用が進んできたのである。

 このような形での基地の共同使用は、沖縄では、基地負担の軽減どころか基地負担の増大だと受け止められるだろう。2015年度の世論調査では、自衛隊については、沖縄では、約7割の人々がよいイメージを持っていると答えたが、日本全体では約9割であるのに対し、依然として複雑な感情があることは否めない。こうした中で、巨大な米軍基地、特に反対の根強い辺野古新基地を自衛隊が使用することで、沖縄県民の批判の矛先が自衛隊にも向かうことにもなりかねない。

筆者は、沖縄の基地負担の軽減のための方策として、基地の共同使用そのものを現時点で排除する必要はないと考えているが、これまでの基地の共同使用がどれだけ地元の理解を得られたのか、本当に基地負担の軽減になったのか、検証する必要はあるだろう。

 南西防衛態勢の強化が謳われる中、沖縄はますます日本の安全保障政策上重要視されている。しかし、その沖縄で日本の安全保障政策や日米同盟への不信感や反発が強い状況はやはり大きな問題である。日本の安全保障政策という観点からも、地元住民が実感できる基地負担の軽減がより重視されるべきである。

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