現在沖縄で、人としての過ちが行われようとしている。国が起こした戦争の犠牲者の遺骨が染み込んだ土地から採取した土砂を、新たな戦争を生み出す基地の「建材」に利用しようというのだ。国家による、戦没者・遺族の尊厳と人権の蹂躙。これは絶対に止めなければならない。
3月1日~6日、沖縄県庁前で一人の男性がハンガーストライキを断行した。遺骨収集ボランティア・具志堅隆松氏だ。「これは基地に賛成とか反対とか以前の、人道上の問題だ」 その揺るぎない信念で、沖縄県知事に土砂採取計画への中止命令を出すよう求めた。
沖縄では具志堅氏の命懸けの訴えに、戦争体験者から若者まで多くのウチナーンチュが呼応しました。ハンガーストライキの現場には、戦争体験者から学生まで幅広い世代のウチナーンチュが集い、沖縄戦や戦後沖縄の歩みについての記憶と、遺骨を「骨神」として尊ぶウチナーンチュの精神文化を継承する場が生まれた。沖縄のメディアは、その一挙手一投足を連日伝えた。
その一方、ヤマト(所謂日本「本土」)での関心度の低さは異常だ。メディアによる大々的な報道がないからかもしれないが、具志堅氏が「人道上の問題」だと繰り返し主張されているのに、「沖縄での土砂採取問題」と言ってピンと来る人は殆どいない。政府が人として誤ったことをしているのなら、それを正す責任は主権者一人一人が背負うべきである。その問題提起の責任すら沖縄に押しつけているようでは、日本の民主主義は危うい。
その危機感から、筆者は沖縄県内外の友人と3月6日、「具志堅隆松さんのハンガーストライキに応答する若者緊急ステートメント」を発出、具志堅氏が何を問題提起したのか、当事者意識を持って学習・議論することを訴えた。しかし、3月全般を振り返ると、そんな当事者意識が日本全体に生まれたとは言い難い。
この問題への認知度が広がらない中、具志堅氏は4月に再度ハンガーストライキを行うことを検討した。しかし、コロナの第4波が到来したことによりハンストは断念せざるを得なかった。運動現場の喪失を、逆に日本全体への問題提起のチャンスに変えるために、4月5日~9日、「若者緊急ステートメント」メンバーと具志堅氏・その支援者が共同でオンライン学習会「若者、ガマフヤー具志堅隆松と語る」を開催した。アーカイブズは東アジア平和行進のYouTubeから視聴頂ける。
それでもこの問題への認知度は高まりきらなかった。「若者緊急ステートメント」についても、オンライン学習会についても、報道したのは主に在沖メディアで、ヤマトメディアでは無視・黙殺とも言うべき状態が続き、むしろヤマト・沖縄の温度差を強調するという皮肉な結果に終わった。