対中国の「ミサイル要塞」にされていく南西諸島――国民を「捨て石」にする戦争を繰り返してはならない

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南西諸島の島々に、陸上自衛隊のミサイル部隊が配備されつつある。有事の際、相手国の航空機や艦船をミサイルで攻撃して食い止めようという作戦で、「仮想敵」は中国人民解放軍だ。背景には、中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」として警戒するアメリカの構想がある。しかし、こちらが撃てば、相手も撃ってくる。「ミサイル要塞」にされた島に住む人々が、弾雨にさらされない保証はない。国民の安全はどうやって守るのか。4月、菅義偉首相とバイデン大統領は首脳会談後の共同声明で台湾の問題に言及し、日米同盟の結束を確認した。アメリカは日本に対中国防衛体制への協力を望むが、もし台湾有事になれば、米軍基地が集中する沖縄や「ミサイル要塞」の島々は真っ先に標的になる。「対米従属」が極まった日米安保体制のあり様について、国民全体での議論はまったく行われていない。誰にも分からないところへ、今、日本は向かおうとしている。

1、「南西シフト」の現状

 これは、令和2年(2020年)版の「防衛白書」に掲載された南西諸島の地図だ。近年、新たに配備された自衛隊の部隊が記載されている。かつて、日本の防衛はソ連侵攻に備える北方の守りが重視されていた。冷戦終結後、次第に部隊の再編が行われ、防衛の主軸は南西地域に移動していく。牽制の対象は中国である。こうした南西地域の防衛態勢の強化は「南西シフト」と呼ばれる。

なかでも注目すべきはここ数年、陸上自衛隊のミサイル部隊の配備が着々と進んでいることだ。鹿児島県・奄美大島、沖縄県・宮古島、石垣島の3島である。


◆奄美大島=奄美駐屯地、瀬戸内分屯地(隊員約550名)
  奄美警備隊(奄美、瀬戸内)
  第344高射中隊(奄美)
  第301地対艦ミサイル中隊(瀬戸内)
 
◆宮古島=宮古島駐屯地(隊員約700~800名)
  宮古警備隊
  第7高射特科群
  第302地対艦ミサイル中隊
 
◆石垣島(隊員約500~600名)
  2019年着工、地対艦ミサイル部隊など

奄美大島では、2019年3月、陸上自衛隊奄美駐屯地と瀬戸内分屯地が開設された。ここには中距離地対空誘導弾(中SAM)を備える高射中隊(奄美駐屯地)、地対艦誘導弾(SSM)を持つ地対艦ミサイル中隊(瀬戸内分屯地)、そして警備部隊、隊員は合わせて約550名になる。

 宮古島でも同月、陸自宮古島駐屯地(千代田地区)が開設され、現在、もう一か所の駐屯地(保良地区)が建設されている。同じように中SAMとSSMの部隊、そして警備隊が配備され、部隊の規模は3島で最大の700人から800人。

 そして石垣島は、2018年に中山義隆・石垣市長が陸上自衛隊の部隊の受け入れを表明して、19年春に駐屯地の建設が始まった。奄美、宮古と同様の部隊が配備される予定で、隊員規模は500人から600人とされる。

2、島の状況

 これらの写真は、沖縄・宮古島の陸上自衛隊宮古島駐屯地だ。上段は、ゴルフ場の跡地に建設された駐屯地を上空から見た画像。沖縄の米軍基地や自衛隊基地をドローンで空撮する市民団体「沖縄ドローンプロジェクト」が撮影した。ドキュメンタリー監督の藤本幸久さん、土木技術者の奥間政則さんらが活動を続けている。

中段の写真は駐屯地の正門。下段はミサイル発射台を搭載した車両で、有事になればこれが島内を移動してミサイル攻撃をすることになる。

これは宮古島の東側、保良(ぼら)地区に建設中のもうひとつの駐屯地。中央のコンクリの大きな塀のようなものに囲われた弾薬庫にミサイルが貯蔵される。3月には弾薬庫2棟が完成した。

そしてこれは、山あいから撮影した石垣島で建設中の陸自駐屯地の工事現場。同じように地対艦ミサイルや地対空ミサイルの部隊が配備される。

 これらが、中国人民解放軍の西太平洋への東進を警戒する部隊配備である。南西諸島を越えてくる人民解放軍の航空機や艦船をミサイルで攻撃をし、進行を阻もうという作戦だ。

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