台湾侵攻の「その後」は?
そう遠くないうちに中国が台湾に軍事侵攻するという話が散見される昨今だが、その種の議論でよく分からないのは、台湾侵攻の「その後」である。仮に中国が首尾よく台湾の軍事占領に成功したとして(その可能性も疑わしいが)、果たしてその後、どのようにして台湾を統治するのだろうか。
台湾で親中感情が圧倒的に優勢となり、統一を推進する政権が安定的に存続するといった状況で「統一」が実現するならともかく、軍事力による無理やりの統一では安定的な統治はとても無理だろう。アメリカにとってのベトナム、ソ連にとってのアフガニスタンどころではない。強硬な統一政策の実行は、習近平体制どころか、共産党政権そのものの存立を揺るがし、また、先端的な半導体生産の世界的な集積地となっている台湾の不安定化は、世界経済に甚大な打撃を与えるだろう。
中国の習近平氏は、国家主席の任期制限の撤廃など、強引な在任延長に走ったこともあり、「台湾統一」をその大義名分に掲げざるを得なくなっているという指摘もある。「内輪の論理」にとらわれて対外関係や国際情勢に十分な目配りができないまま、無謀な強硬策に走ることほど、怖いことはない。
習近平来日で何を語るのか
コロナ禍もあって実現の時期は見通せないが、習近平氏の訪日は日中間の重要な外交案件となっている。習主席の来日という重要な機会に、日本の指導者は果たして、何を語りかけるのか。
外交当局の用意するペーパーを無難にこなすことにとどまらず、対外強硬策が行きつく先の陥穽を説くのは、同様の道を辿った過去を持つ日本の指導者の重要な役回りだと思うのだが、そこまでのスケールを今の日本の指導者に求めるのは過大な期待というものだろうか。
少なくとも、来日した習氏に対しては当たり障りのない「友好親善」を語りつつ、日本国内の内輪の席では冒頭のような「本音」(なのか、ウケをねらった発言なのかも分からないが)を語るといった無責任な振る舞いだけはしないで欲しい。