菅首相退陣後の政治と沖縄

この記事の執筆者

菅首相の退陣から総選挙へ

 菅義偉首相が今月はじめに退陣して1カ月あまり。自民党総裁選挙から岸田文雄氏の総裁選出と首相就任、そして解散総選挙と、この間の政治の動きは目まぐるしい。

その一方で、週刊誌系のオンラインメディアによれば、NHK報道局の中枢では菅氏に連なると目された幹部たちの凋落ぶりが顕著だという(『現代ビジネス』10月23日)。首相の交代に伴う政治記者の入れ替えはよくあることだろうが、総務相や官房長官として長らくにらみを利かせてきた菅氏の影響力の衰退は、一つの時代の終わりを感じさせる。

 振り返ってみれば、自身の派閥を持たず、「たたき上げ」をウリにしてきた菅氏は、政治主導の流れに乗った人事権の掌握を最大の武器として権勢を拡大してきた。その菅氏は首相として政権基盤が揺らぐ中、最後は人事に活路を見出そうとした。二階俊博幹事長の交代など、自民党役員人事による政権浮揚を試みたものの、「党利党略」ならぬ自己都合優先の「個利個略」と見られてあえなく退陣に追い込まれた。

世襲議員が幅を利かせる現在の自民党にあって、人事権を拠り所に影響力の拡大に励み、権力の階段を登り詰めた菅氏の「終わり」には一抹の悲哀を感じる。霞が関の官僚を震え上がらせ、服従させた菅氏の人事権行使も、自民党内の権力闘争では、「立ち止まって考えるべきだったな。恩知らずだった、ということだ」(二階幹事長の発言、『朝日新聞』2021年9月9日)といった反応の前に、あえなく潰えた。

この記事の執筆者