崩壊した「普天間問題」の構図

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戦争の破滅的な性格

それでは政府や防衛省は、戦場となるであろう沖縄本島や軍事化のすすむ先島諸島の住民を保護する態勢を整えているのであろうか。

「申し訳ないが、自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう」との制服組幹部の驚くべき発言(「共同通信」2021年12月23日)は、住民保護という根本認識を欠落させた「見殺し」の論理そのものである。問題は本土にも及ぶ。有事となれば台湾防衛の拠点となる本土の米軍基地に中国が攻撃を加えるであろうと見られている。日米安保七〇年の歴史において、沖縄と本土が攻撃されるという具体的なシナリオが想定されるのは初めての事態である。

これに対して政府は、戦争の事態を避けるためにこそ防衛費の大幅増額、敵基地攻撃能力の構築、ミサイルの配備など抑止力を高め米軍と提携して軍事バランスをはかるべき、との方針を掲げる。しかし、この方針の最大の問題点は、互いの抑止力の増強による際限なき軍拡競争の行きつく果てが示されず、起こりうる戦争の性格を無視したところにある。仮に米中間で本格的な戦争が展開されるならば、従来の陸海空のレベルを越え、サイバーやAIや宇宙など全領域に及ぶ未曾有のものとなり、その結果は破滅的なものとなるであろう。

住民の犠牲をいとわず軍事化を推し進めるとすれば、それは戦前の論理そのものである。

大戦の教訓を踏まえるならば、どれだけ犠牲者がでても国はいかなる責任も負わない。とすれば、今や「安保外交は国の専権事項」という大前提が問い直されねばならない。なぜなら、国の方針に委ねておけば住民が「見殺し」にされかねないからであり、放置され犠牲になる側は生活と命を守るため国の方針と対峙する権利があろう。

至上命題としての「戦争回避」

まず当面の課題として、コロナ蔓延の源泉となり準戦時体制の訓練で住民の日常生活を脅かす米軍が依拠する地位協定の改定を、地方選挙・全国選挙の一大争点に据えるべきである。

次いで、日中間の紛争の火種を消していく取り組みが緊要である。台湾問題とも直結する焦点の尖閣問題については、中国と最前線で対峙する海上保安庁の元警備救難監・向田昌幸の訴えに問題解決の手がかりが示されている。

いわく、米国が尖閣の領有権に関して「中立」の立場をとってきたことが「中国の領有権の主張と対日攻勢の原動力になっている。尖閣の領有権は日本にあると米国にはっきり態度表明をしてもらうよう、政府はもっと働きかけてほしい」「現場任せでは限界がある。政治・外交面で積極的に有効な対策を講じてほしい」と。(『日経新聞』2021年3月18日)

まさに至言である。中国の「攻勢」の背景には、「日本固有の領土」論を否定する米国の立場を黙認してきた日本側の姿勢があり、そうであれば政府は尖閣問題は「領土問題」であることを認め、中国や台湾などと危機管理の枠組み構築にむけた協議を直ちに始めるべきである。尖閣問題は軍事ではなく政治外交上の問題であり、平和的解決への道筋が開かれるならば地域一帯の緊張緩和に繋がり、軍事化に歯止めをかけられるであろう。

米中対決で日本が最前線に置かれる事態を前に、沖縄と本土の世論は生き残りをかけて関係諸国や国際社会に向けて「戦争回避」を至上命題にするよう訴えねばならない。いずれにせよ今や明らかなことは、普天間の危険性を除去するために辺野古の工事を進めるという構図が完全に破綻したことである。普天間が、そして沖縄が直面している危険性とは「戦争の危険性」であって、この危険性除去において辺野古の工事などは全く何の意味も持たないし、持つはずもない。戦争の危険性の除去こそ普天間問題の「唯一の解決策」なのである。

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