崩壊した「普天間問題」の構図

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知事選の最大争点とは何か

今秋に予定されている沖縄県知事選挙をめぐっては、辺野古の工事の是非が最大争点になるであろうと多くのメディアが報じている。しかし、上に述べてきたことを踏まえるならば、これは完全なミスリードである。

秋に選出される知事が担うことになる向こう4年間においては、台湾問題がいよいよ緊迫の度合いを増し、一触触発の事態さえ起こりかねない情勢となるであろう。そして沖縄では、核搭載可能な中距離ミサイルの導入をはじめとして軍事化がさらに急ピッチで進むであろう。つまり、沖縄が最前線に立たされ戦場となる危険性が日増しに増大する4年間となるであろうことは、十分に予測される。

こうした予測にたてば、知事がなすべき責務は、戦場となり膨大な県民が犠牲となる事態をいかに防ぐか、まさにこの点に尽きる。台湾有事の最前線となることを許すのか、危険な軍事化の進展を許すのか、県民が犠牲となることを許すのか、要するに、沖縄が再び戦場となることを許すのか、これこそが知事選の最大の争点とされねばならない。

この意味において、辺野古の工事などは矮小な問題と言っても過言ではないであろう。辺野古に注入されるエネルギーの全てを戦争の回避に向けるように、立場の違いを越えて県民の総力が結集されねばならない。普天間をめぐる情勢が根本的に変容したことを理解できず、沖縄が直面する真に危機的な事態を把握できないのであれば、向こう4年間を担う沖縄県知事としての資格を問われることになるであろう。

【本稿は2月1日付『琉球新報』掲載記事を加筆しました】

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