具志堅隆松さんと迎える6・23 (5) 戦没者を慰霊し、非戦を誓う一日

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平和の礎周辺で聞こえる言葉は日本語だけではない。韓国語を話す人も何人か見かけた。平和の礎には沖縄県民・日本人のみならず、韓国・北朝鮮・台湾・米国・英国出身者も刻銘されている。平和祈念公園の中には韓国人慰霊塔もある。沖縄戦は決して沖縄や日本の人々だけにとっての記憶ではない。

驚いたことに、米軍関係者と見られる制服を着た一行も米軍戦没者名が刻銘された石版の前に立ち、花輪を捧げていた。沖縄を再び戦争に巻き込もうとしている米軍が沖縄のご遺族と同じ場に来ることは手放しで肯定できない気もするが、戦没者を偲ぶ気持ちは国籍の違いを超えて共有されていると信じたい。米国は日本より遙かに真剣な遺骨収集を国を挙げて行っているが、米兵たちは自分たちの先輩のご遺骨が辺野古新基地建設の埋め立てに使われるかも知れないことを知っているのだろうか(戦没者遺骨を収容する米国防総省の専門機関「戦争捕虜・戦中行方不明者捜索統合司令部 (DPAA)」の報告書によると、未回収の沖縄戦遺骨は少なくとも228人分あるとのこと)。仮に遺骨土砂問題が米国内で問題視されれば、外圧に弱い日本政府は南部土砂の採取を諦めるだろうか。

時刻は9時半を回り、日差しが一層強くなる。公園内の人も増え始め、南部戦跡の各地で慰霊行事が始まる。具志堅さんはこの日、予定がぎっしりだ。まずは「『平和の礎』名前を読み上げる集い」のクロージングイベントへ。「沖縄戦没者の名前は、これまでご遺族しか呼ばなかったと思う。しかし、私たちが公の場所で遺族の名前を読み上げることは、戦争犠牲者への存在の確認の呼びかけになる。『戦没者は忘れ去られる存在ではない、生きていた存在なのだということを、遺族だけではなく私たちも確認しますよ』と戦没者に呼び掛けることが出来る」と読み上げの意義を語った後、広島県出身のご遺族の名前を読み上げられた。具志堅さんは、「世界中でこのような取り組みをしてくれれば良い」と話す。

戦没者の名前を読み上げる具志堅さん

名前の読み上げ集会の後すぐ、「守ろう!戦没者の尊厳+沖縄県民の命」と題した集会(具志堅隆松・ガマフヤー支援者の会・宗教者の会・ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会の4者が主催)が開かれる平和の広場に移動。この集会での具志堅隆松さんの発言は大変重要なので、長いが全文掲載したい。

「私たちはこれまで何度もこの摩文仁の地で、6月23日に平和を誓ってきました。過去の沖縄戦の犠牲者の御霊が安らかでありますように。そして、私たちは二度と戦争を起こしません。子どもたちに、戦争の恐怖を与えるような、そういうことは絶対させませんと言うことを、みんなが誓い合ってきました。しかし、今年の6月23日の慰霊の日は、その私たちの決意がさらに試され、そして私たちが声を上げる決意をしなければいけないような、そういう事態になってしまっています。それはいくつかの問題があります。その中でもとりわけ私が指摘しているのは、戦没者の遺骨がまだ残っている南部の地から辺野古の埋め立て土砂を取ろうとしていることです。私はこれをやめてくれと言っています。なぜならば、戦没者の遺骨を、血を吸い込んだ南部の土地から土砂を取って埋め立てに使うというのは、戦争の犠牲者への冒涜に他ならないからです。これは絶対許してはいけません。世の中に間違っていると断言できることはそんなにありません。しかし、これは明らかに間違っています。人道上間違っているんです。そして、私たちが南部の土砂の辺野古の埋め立てへの使用計画を撤回してくれと声を上げている最中に、防衛省はもっと酷いことを言い出しました。それは、沖縄から中国軍を攻撃しようというのです。日本や沖縄が攻撃されるわけではないのに、沖縄から中国軍を攻撃しようというのです。これはもう、専守防衛を完全に逸脱しています。沖縄から中国軍を攻撃すれば反撃されます。これは、そのまま戦場になると言うことです。私たちは、このことを許してはいけません。私たちは、台湾とも中国ともフィリピンとも仲良くしたいんです。そして、同じように、中国も台湾も仲良くして欲しいんです。私たちが沖縄戦から得た教訓というのは、大きく言って二つあると言っています。一つは軍隊は住民を守らない。そして、軍隊がいる所は軍隊に狙われると言うことです。私たちは軍隊がいなければ平和は守れないという存在ではありません。私たちは、独自に平和を模索することが出来ます。そして、人類は、私たち人間は、もう戦争と言う手段を放棄すべきです。どうか皆さん、このことを一緒に自信を持ってみんなに伝えていきましょう。」

「守ろう!戦没者の尊厳+沖縄県民の命」集会での具志堅さん

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