沖縄ビジネス展望~「好調経済」の内実を問う②~

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域内に落ちるカネよりも、域外に支払うカネが大きい経済構造となった要因のひとつとして米国施政権下時代における米軍政府の政策による誘導が大きい。沖縄統治を担当する米軍政府が、為替レートを移入に有利となるようなレートに固定したのである。

移入に有利な為替レートということは、移出には非常に不利なレートということになる。つまり、沖縄地域でモノ・サービスを生産し、移出して域外からカネを稼ぐというビジネスが展開しづらい仕組みが政策的に作り上げられたのである。実際、1955年と1970年の移入超過額を比較すると8倍にまで増大してしまった。

ただ、米国施政権下時代の沖縄は、多くの商品を移入していたが、それら商品を買うためにはカネが必要である。では、どこからそのカネが生み出されていたのであろうか。それは、軍関係からの受取であった。1960年代半ばには県民の所得に占める軍関係受取の割合は34.4%(1965年)に達していた。まさに米軍基地からの収入に依存する経済となっていたのである。

 

現状でもカネは流出している

 

1972年の施政権返還後は、移出額、移入額とも一気に増大した。移出額の伸びが大きかったこともあり、移入超過率は1970年の79.1%から約40ポイント下落し、75年度には30%台まで低下。その後は、一時的に20%台にまで下落したものの、現在は40%台で推移している(図表2)。日本に復帰したことにより”極端な移入超過状態“は解消された。観光収入の増加も移出額の増加に寄与しているであろう。

ただ、現状の移出額と移入額の差(県際収支)を産業別に見てみると、依然として県内の各産業の多くは移入に頼っている状況である(図表3)。宿泊業や飲食業など観光関連産業に近い業種が含まれる「対個人サービス」部門は域外からカネを取り込んでいるものの、ほとんどの産業において域外収支がマイナスとなっており、地域内の消費を満たすほど域内で生産できていない。地域外に生産を依存しているのが現状で、多くのカネが県外に流出している。

今後、沖縄経済をさらに活性化させていくためには、観光関連産業のほかにもカネを流入させることのできる産業が必要不可欠なのだ。【③に続く】

 

【図表3】産業別県際収支

(出所)「沖縄県 2011(平成23年)産業連関表」より作成

 

<参考文献>

琉球銀行調査室編『戦後沖縄経済史』(琉球銀行、1984年)

嘉数啓『島嶼学への誘い』(岩波書店、2017年)

飯田泰之ほか『地域再生の失敗学』(光文社、2016年)

そのほか国、沖縄県が発表している各種統計を参考にしてデータを作成した。

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