沖縄ビジネス展望~「好調経済」の内実を問う③~

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ただ、ここでひとつ疑問が浮かぶ。一般的に経済が好調な状態というのは、民間主導で経済が循環している状態をイメージするのではないだろうか(首都圏の経済をイメージされたい)。沖縄地域は好景気にも関わらず、財政依存度が占める割合が大きいのだ。沖縄経済は、民間企業の力が依然として十分ではなく、財政がその地域の経済に与える影響が相対的に大きくなっていると考えられないだろうか。

沖縄経済は観光業に支えられ好調とはいえ、財政支出がいずれ減少してしまうと、経済が減退してしまう可能性はないだろうか。現在の沖縄振興計画は2021年度まで。政府はそれまでは沖縄関係予算3000億円台を約束しているが、それ以降は現在の日本の財政状況を鑑みれば減額も想定される(政府の沖縄振興策については機会があれば紹介したい)。それまでには、地力ある民間企業が増えていかなければ、この経済の好調さは持続できなくなるかもしれない。

 

潜在的な可能性は高い

 

好調な経済状況の半面、県内からカネは流出している状況や、沖縄県経済に占める財政依存度の高さを指摘し、好調な経済の足元の不安定さを紹介した。

しかし、沖縄地域は魅力ある市場だ。県外にカネが流出しているということは、県外に発注されている商品・サービスを県内で生産し提供できるような企業が現れれば、県内市場で一気にシェアを拡大できるであろう。また、人口の増加、観光客も増加トレンドが続くならば、潜在的な市場は拡大こそすれ、縮小することはない。マーケットニーズを掴み、商品・サービスを提供できれば多くの企業にとっては収益確保が望めるマーケットではないだろうか。

また、これまでは島嶼県として日本本土と離れていることが、経済の発展に支障をきたしてきていると考えられてきた。しかし、東アジアの中心に位置する地域的特性が沖縄の経済発展にプラスとなる可能性が見えてきた。

もちろん、課題は多い。一人当たり県民所得は1972年の44万円と比較すると4.8倍に伸びているが、2014年度は213万円で依然として全国最下位だ。所得の向上にまで繋がらなければ、地域の住民に好景気の実感は乏しいだろう。次回からは沖縄地域における観光、物流、小売など好調な沖縄経済の現状や課題を紹介していきたい。

【<「好調経済」の内実を問う>の項は了】

<参考文献>

琉球銀行調査室編『戦後沖縄経済史』(琉球銀行、1984年)

池宮城秀正『琉球列島における公共部門の経済活動』(同文館出版、2009年)

嘉数啓『島嶼学への誘い』(岩波書店、2017年)

そのほか国、沖縄県が発表している各種統計を参考にしてデータを作成した。

 

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