「オール沖縄」の転換点
「こんな小さな市に焦点をあてて、そのたびに市民が二分して争う。本当にそれでいいのか」「なぜ、われわれだけが『基地』『基地』と問われなきゃならんのか。そうしている限り、基地は本土の問題にならないし、解決もしない」
1997年に普天間基地の移設を受け入れて辞任した比嘉鉄也元名護市長の言葉である(『決断―沖縄普天間飛行場代替施設問題10年史』)。この20年間、米軍基地の集中する沖縄の中で、さらに北部の名護市に基地負担が押し付けられるという構図に、名護市民は分断され、苦悩してきた。移設を容認した比嘉氏でさえも不満を吐露するように、日本の安全保障のひずみが、沖縄の一都市に押し付けられているのだ。
今回の選挙を受けて、「地元の理解」を得たとして、日本政府はすでに工事を開始している辺野古移設をさらに推進しようとするであろう。また、2013年1月の名護市長選挙での稲嶺勝利を受けて、同年11月に翁長雄志県政が誕生したことを踏まえると、今回の選挙は、翁長県政、さらには辺野古移設阻止を掲げる「オール沖縄」の大きな転換点となる可能性がある。
しかし、今回の名護市長選挙で辺野古移設への沖縄県民の賛否は示されていないし、依然として沖縄県全体では辺野古移設への反対は根強い。今回の名護市長選挙で勝利した渡具知氏は、辺野古移設への賛否を明確にしなかった。また出口調査によれば、普天間基地の辺野古移設に対し59%が反対している(『朝日新聞』2018年2月6日朝刊)。しかも今回の選挙に際して、渡具知氏は、公明党沖縄県本部との政策協定で、「日米地位協定の改定及び海兵隊の県外・国外への移転を求める」ことを掲げた。海兵隊の国外・県外移転や日米地位協定の改定の要求は、昨年2017年11月28日に沖縄県議会において(自民党を含めた)全会一致で可決されたものだ。つまり、沖縄県内でのコンセンサスとして、海兵隊の「国外・県外移転」が求められている。
名護市長選挙の結果がどうであれ、「沖縄基地問題」の本質は、沖縄に過大な基地負担が集中するという構造にあることに変わりはない。沖縄から問われ続けているのは、日本の安全保障、さらには国のあり方だということを、私たちは理解しなければならない。