名護市長選挙、それぞれの言葉【上】

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具志堅秀明さん「家族は公明党支持だけど」

 

「はいさいー、どうもです。名護市出身、具志堅っていいます」

投票日まで4日となった水曜の夜。現職の稲嶺進候補を応援する若者たちが集まる集会で、具志堅秀明さんが軽やかに話し始めた。ところが会場はすぐに静まりかえった。

「自分のなかで一番でっかいしがらみは、やっぱ家族のなかに結構あって。自分の家は公明党を支持している。母体(創価学会)で母ちゃんとかじいちゃんとかがんばってて。信じることはめちゃくちゃよいと思うけど、その中で自分の主張というのが、家族の立場が変になるから、今回は前に出づらいとか、めちゃ考えてた」

前回の市長選では自主投票だった公明は、今回は自民党が推す渡具知武豊候補の推薦に回った。その決定に従えば、公明党の支持母体である創価学会の関係者は、渡具知候補に投票することを求められる。24歳、沖縄国際大学4年の具志堅さんは、その状況に葛藤していたことを、仲間たちに吐露したのだ。

「でも今回はめちゃ大きい選挙だと思うから…。きのうも家族とめちゃ話をして、自分のなかでこうありたい、こう思ってるってところは主張しながら…。それで崩れるような人間関係ではないし、そこは関係を保ちながら、今回はがんばっていきたいなって。きのうはめちゃ思いました」

具志堅さんは家族と異なる選択をする心情を、ゆっくりと絞り出すように語った。家族だけではない。地元、名護市の人々の複雑な思いにも触れた。

「自分は今回の選挙は、なんかもうシステム、しがらみとかから、いかに個人的に脱せるかっていうのがテーマだと思っていて。それは自分のこともそうですけど、地元はやっぱり正直、怖いです。地元で生まれて、地元でこうした選挙活動…もともとは自分も米軍基地で4年くらいバイトしていた時もあったりして、だから結構いろいろな立場の人たちの状況も、皆がベストを尽くしている状況っていうのもわかるし。だからこそ全部の立場を知っても、やっぱり今の状況がおかしいって思ってるからこそ、自分の思っていることを主張しないまま、この選挙をやりたくないって思っているから。もう今回はマジでがんばろうっていうのが、チョー固まっています」

集会が終わったところで、具志堅さんに話しかけた。しがらみを脱したいという思いを聞いたあと、こう尋ねた。

きのう親とどんな話をしたんだろう?

「それはまあ、そうっすね」

いろいろな葛藤があったんだ?

具志堅さんはこみ上げるものを抑えるように言った。「そうです」。その瞳は潤んでいるように見えた。

 

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