<ワシントンで3月13日に開催された沖縄県主催のシンポジウム「Changing East Asian Security Dynamics and Okinawa: Re-examine the US Force Posture in Japan」(「変容する東アジアの安全保障のダイナミクスと沖縄―日本における米軍態勢を再検討する」)にパネリストとして参加した沖縄国際大学の野添文彬准教授の報告、後編です>
辺野古「代替案」をめぐって
シンポジウムではどのような成果があっただろうか。
第一に、ワシントンという場所で、多くの参加者が集まって沖縄について活発な議論が行われたことは、それ自体、大きな成果だった。特に、ペリー氏やハルぺリン氏といった元アメリカ政府高官が出席して発言したことは注目を集める上で重要だったといえる。東アジアの安全保障という幅広いテーマから沖縄を論じ、幅広く沖縄に関心を持ってもらうという前述の沖縄県の意図は達成されたといえる。
第二に、何人かの登壇者によって、沖縄米軍基地の削減と日本の安全保障を両立させる方策として、自衛隊基地との共同使用や民間施設の使用を検討する必要性という方向性が議論されたことである。沖縄の米軍基地を日本本土に基地を新たに建設するという形で移設することは政治的には困難ではあっても、すでにある日本に本土の自衛隊基地に米軍を使用させることは、比較的受け入れられやすいのではという議論は説得的だという印象を筆者も受けた。(筆者自身は、現在進められている日米の基地の共同使用のあり方には問題があると考えているが、それは別稿に譲る。)
もっとも、次のような課題もあった。第一に、北朝鮮や中国の動向を踏まえると、依然として国際環境は厳しく、沖縄の米軍基地は重要であり続けるという意見が多く出された。ペリー元国防長官も昨年のNHKの番組で沖縄に同情的な発言をしていたが、今回のシンポジウムでは、朝鮮有事における沖縄米軍基地の重要性を繰り返した。またペリー氏は、日本本土への基地移設についても、時間とコストの問題から難しいことを強調した。登壇者(特にアメリカ側)の発言フロアの反応も含めて全体として基地負担の是正を訴える沖縄にとって厳しい反応だったといえる。
第二に、辺野古移設の代替案が真正面からシンポジウムで議論された訳ではなかった。沖縄県から具体的な代替案が発表されないことについて、メディア関係者から、シンポジウムの意義やインパクトについて疑問の声も耳にした。筆者も、シンポジウム参加にあたって代替案の検討を依頼された訳ではない。シンポジウムで議論する論点について、もう少し綿密な調整や検討が事前に必要だったかもしれない。
なお、翁長知事は、帰国した3月16日、記者会見で「代替案には妥協が必要になる。沖縄県民が妥協する要素はない」と述べて辺野古移設の代替案を沖縄県として提示しない方向性を示した。