「環境問題」の観点から沖縄に向き合う―環境省との初交渉を受けて

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5月25日、遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」具志堅隆松さんたちと国との意見交換会が開催され、午前中に環境省と、午後から厚労省・外務省・防衛省と戦跡の保護・遺骨土砂問題・戦没者遺骨収集・自衛隊配備など多くの問題を議論した。会には具志堅さん・その支援者のみならず、地元の懸念を無視した自衛隊配備が進められているうるま市・宮古島・石垣島等に暮らす人々が直接上京またはオンライン参加して各省担当者に沖縄の懸念と怒りを伝えた。今回は沖縄戦跡国定公園の景観保護に関して初めて環境省とやり取りをしたので、そのことを中心に交渉の内容を報告し、今後の運動の展開を考えたいと思う。


戦跡の景観保護をめぐって

沖縄戦の激戦地となった沖縄島南部(現在の糸満市・八重瀬町)は「沖縄戦跡国定公園」に指定されており、沖縄県のホームページには、「公園指定の趣旨は、第二次大戦における日米両国の激戦地として知られている本島南部の戦跡を保護することにより、戦争の悲惨さ、平和の尊さを認識し、20万余りの戦没者の霊を慰めるとともに、延長11キロメートルにおよぶ雄大な海蝕崖景観の保護を目的に設けられた公園で、戦跡としての性格を有する国定公園としては我が国唯一のもの」と書かれている。

しかし、現在は採石場等の開発が進み、戦没者のご遺骨・血・肉が染み込んだ土地なのに、空撮すれば「崖以外殆ど開発されている」(具志堅さんの言葉)状況になってしまっている。中には「野球場二つ以上の土地が採石のための掘削で深さ50メートルにも達し、埋め戻すことが出来ないまま」(具志堅さんたちが事前に提出した質問書より)放置されている場所もある。

自然公園法第五条2には「国定公園は、環境大臣が、関係都道府県の申出により、審議会の意見を聴き、区域を定めて指定する」と書かれている。そこで、具志堅さんたちは環境省に対し、沖縄戦跡国定公園指定の経過・意義について国としての説明をするとともに、戦跡が開発(とりわけ辺野古新基地建設のための埋め立てに伴う採掘)に曝されている状況の現地調査や、戦跡の景観保護のための環境省として積極的関与をすること(戦没者遺骨収集に責任を負う厚労省との協議を行うことや、自然公園法に通常の自然保護の枠を超えた戦跡国定公園特別の趣旨を加えること)を求めた。沖縄戦跡国定公園を指定したのは国なので、環境省として責任を持って戦跡の景観を保護して欲しいと求めたのである。

環境省は沖縄戦跡国定公園の指定の経過・意義については沖縄県と同じ認識を示し、自然公園法における「自然」の中には文化的・社会的要素も含まれると認めた。自然公園法の目的として戦没者遺骨収集や慰霊を含めることは出来ないとは言いつつも、地上戦の戦場にされたという沖縄独自の自然と景観を守ることは同法の範疇に入ると認めたのだ。

しかしながら、環境省として戦跡保護に積極的な関与をすることを求めた件に関しては、国定公園の管理主体は都道府県であることを理由に、環境省としては何ら関与しないとの一点張りだった。「国定公園は都道府県が管理するので、その現状について環境省は把握していない」と言った上、現地調査にすら「沖縄県がすべきこと」として応じてくれなかった。「是非沖縄に足を運んで欲しい」「環境省は環境破壊の黙認者にならないで欲しい」との沖縄の方々の訴えは全く届かなかった。

国立公園は国が管理するのに対し、国定公園は都道府県が管理するというのは確かだ。都道府県が自然保護に主体的な役割を果たすこと自体は、地方自治の観点から一概に不適切とは言えないと思う。しかし、国定公園を指定するのは環境大臣であり、自然公園法第三条にも国等の責務として「国、地方公共団体、事業者及び自然公園の利用者は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第三条から第五条までに定める環境の保全についての基本理念にのつとり、優れた自然の風景地の保護とその適正な利用が図られるように、それぞれの立場において努めるとともに、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない」と書かれている。

国定公園内での開発の認可を判断するのは都道府県だとしても、国定公園を指定した国の責任が全くなくなると言うのは納得がいかない。会場から「そんなことでは環境省はなくても良いではないか」との批判が出るのも当然である。具志堅さんも「環境省はもう少し思いやりがあると思っていた」と失望の声を漏らした。

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