軍事のために貴重な自然環境を犠牲にして良いのか
意見交換会全体を通し、外務省や防衛省との交渉には一定の限界があるように感じざるを得なかった。私たちが軍拡に頼らない外交を求めたのに対し、外務省は「防衛力は外交の裏付け」と返答し、ウクライナを引き合いに出して「自国を防衛する能力と意志を示さないと、国際社会から支援されない」とも主張した。
遊休化が指摘される那覇軍港移設に伴う浦添西海岸埋め立ての問題については、防衛省は「遊休化していない」との一点張りだった。現地住民や意見交換会に同席した沖縄選出国会議員が那覇軍港が遊休化していない具体的根拠を示すよう求めても防衛省は何ら具体的根拠を示すことが出来ず、挙げ句の果てには「那覇港湾施設は、事態が緊迫した際の使用も当然に想定されており、平素の使用状況のみから施設の運用状況を判断することは適切ではない」と主張した。「有事になれば使うかも知れない」との理由で沖縄県内での基地のたらい回しが断行される結果、一度地上戦の戦場にされた沖縄の土地・自然が再び一方的に壊され続ける。そんな中、防衛省や外務省だけを相手にしても状況が好転するとは信じがたくなってくる。
周辺諸国への脅威論が煽られ、日本全体の世論が軍備増強を支持しがちな現状において、反軍・反基地運動を日本全体に広げるのはとても困難だ。そんな中、環境保護という論点は、従来の反軍・反基地運動に関わってこなかった人々にも沖縄島南部の開発のみならず、沖縄の過重な軍事負担全般の問題に注目して貰う新たな入口になると思う。
沖縄の軍事負担は減らないどころか、自衛隊配備のせいでかえって増えているが、「軍事のために貴重な自然環境を犠牲にして良いのか」という問いは左右を問わず考えて貰える論点になると期待される。環境問題については、若い世代の中にも関心を持って取り組む人が多い。明治神宮外苑の樹木大量伐採や、大阪の「木を切る改革」に反対する運動などを見ていると、開発一辺倒の行政に対する問題意識は全国的に高まっていると思う。環境保護の観点を一層強調することで、沖縄で強行される軍拡に問題意識を持つ人を多様化することが出来れば良いと思う。