より広い構想の中で…
シンポジウムを受けて、どのような展望を考えるべきだろうか。
第一に、ワシントンへ沖縄から発信を続けること自体は重要である。ワシントンでは、沖縄のことはほとんど論点にならず、なったとしても日米両政府の見解が広がっている状況である。近年、政治状況を背景に、ワシントンでは沖縄基地問題について、特に政府と異なる見解について公に発言する研究者がますます少なくなっているということも耳にした。
しかし、こうした中だからこそ、沖縄の声を発信し続けることは、長期的な意味で重要である。特に多くの米軍が存在する沖縄の情報は、アメリカにとっても貴重なはずである。その際、ワシントンという米国のグローバルな戦略が議論される特殊な場所で、どのように沖縄を語るか、そのロジックやコトバがもっと練られる必要があるだろう。
これと関連するが、第二に、シンポジウムを踏まえて、沖縄の基地負担の軽減と東アジアの国際環境への対応を両立させるための解決策が専門家を中心にもっと活発に議論されるべきだろう。普天間基地の辺野古移設を沖縄県民の多数が反対しているという事実は日米同盟の不安定要素として重要である。その上で、この議論をさらに進めて、日米同盟を安定させ、ひいては東アジアの安全保障にも寄与する現実的かつ望ましい解決策はいかなるものなのか、徹底した議論が必要なのではないだろうか。どのような日米同盟や東アジアの秩序のあり方が望ましいかという、より広い構想の中で沖縄の基地問題の解決への道筋が見えて来るのではないだろうか。
第三に、ワシントンだけでなく、まずは東京をはじめ日本本土で沖縄基地問題への理解をどのように広げ、実際に日本政治を動かしていくかを考える必要がある。ワシントンで沖縄の基地問題について語っても、「それは日本の国内問題だ」という返答が多いという。それは一義的には事実であり、沖縄基地問題に取り組むためには、やはり日本政府、日本政治を動かさなければならない。特に安倍政権の支持率が低下し、「安倍一強」が揺らぐ今こそ、ポスト安倍を見据えた戦略が必要となるだろう。本サイトの平良好利論文が論じるように、沖縄の基地問題は、日本の安全保障のあり方、ひいては日本の「国のかたち」の問題なのであり、だからこそ、日本全体でその解決が目指されるべきなのである。