「今の答弁は荒っぽい」
国際法が専門の岩本誠吾・京都産業大学教授は、「受け入れ国の法適用」という米国の解釈が妥当だとした上で話す。
「主権国家の領域内で国内法が適用される原則の例外を地位協定は設ける。冷戦期に米ソ各陣営内で外国軍が常駐するようになり、法的地位を明確にする必要から地位協定が増えたが、それは例外の範囲がはっきりしてきているということです」
だから、日本政府が今のような説明を続けることは「さっぱり理解できない」という。
政府で国際法の解釈を担うのは外務省だが、この問題は国内法の適用範囲と表裏一体だ。「今の答弁は荒っぽい」という声は、政府内にも、元裁判官や元検事、弁護士にもある。
問題は、国際法を在日米軍に寛容に解釈する日本政府の姿勢が、さまざまな問題での交渉に悪影響を及ぼしていないかだ。
沖縄県は米軍機の飛行について米軍が駐留するドイツとイタリアで今年2月に調査し、中間報告書で「事故をきっかけとした世論の高まりを背景に地位協定改定などで活動をコントロールしている」と指摘。一方で「日本政府は一般国際法上、国内法が適用されないとの立場を取り、両政府で合意した飛行制限も守られていない」とした。
そして、「米軍基地をめぐる諸問題の解決には、原則として日本の国内法が適用されないままで米側に裁量を委ねる形となる運用の改善だけでは不十分であり、地位協定の抜本的な見直しが必要だ」と訴えている。
非公開の会合で激論?
だが、河野太郎外相は「地方自治体の活動のいちいちにコメントは控える」(6月の国会答弁)。地位協定をめぐる問題は外務省北米局長と在日米軍副司令官をトップとする日米合同委員会で扱われ、「時には激しい議論になる」と北米局長経験者は話すが、非公開で日本側の主張ぶりはよくわからない。
地位協定の国際比較に詳しい伊勢崎賢治・東京外国語大学教授はこの問題を『AERA』の昨年4月17日号で指摘。改めて語る。
「駐留米軍の事故を機にドイツは地位協定を改定し、国内法適用の範囲を演習空域などへ広げた。改定を避け、駐留外国軍に国内法は不適用と言い続ける日本政府に、日本人や、自衛隊を派遣した先の国の住民の人権を守れるでしょうか」
【本稿は『AERA』7月9日号より一部修正の上、転載しました】