「ゆるさ」は何を生み出すのか
元山さんたちは、意見の異なる若者たちとも対話を試みる。
たとえば嘉陽宗一郎さんを、県民投票を考える集会に呼ぶ。嘉陽さんは、名護市長選で当選した渡具知武豊候補の選対本部で青年部長をつとめた若者だ。
名護市長選挙の取材で、辺野古の新基地について尋ねると、彼はこう答えた。
「法治国家だから国が決めたことには従って、一歩前に進んでもいいのでは」
どうせ工事を止められないなら、もらうものをもらったほうが得だという、住民に広がるあきらめにも似た感覚を、嘉陽さんは共有しているように思えた。
嘉陽宗一郎さんのような立場の違う同世代の若者とも酒を飲んで、沖縄の将来について語り会いたいと、元山さんは言う。戦闘モードにある座り込み世代からしたら、こうしたところも「ゆるく」見えるのだろう。
もちろん座り込み世代の中にも、歓迎している人たちもいる。元山さんらが開いた県民投票の勉強会には、若者だけではなく、お年寄りの姿を見ることもできる。そのひとりはこんな思いを吐露した。
「若者が中心というのが、すごくうれしいですね。私も辺野古に時々座り込みに行きますけど、はっきり言って、これまでは年配の人間ががんばっていたんです。でもこの大事な問題に若者たちが関心を持ってもらわないと突破口は開けないんじゃないかと思っていましたから、その意味で県民投票を評価したいと思います」
時は流れ、否応なく世代は変わる。
彼らの持つ「ゆるさ」は何を生み出すのか。
そして沖縄はどこに向かうのか。
時計の針はいまこの瞬間も、止まることなく動いている。
【本稿はTBSキャスターの松原耕二さんが沖縄での経験や、本土で沖縄について考えたことを随時コラム形式で発信します】