安倍政権の「幕引き」と沖縄【上】

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強硬策でこじれた普天間・辺野古

 

さて、このように「キャッチフレーズ羅列」の第二次安倍政権の中にあって異彩を放つのが、実行ありきとばかり突き進んできた普天間・辺野古問題である。強固な政権基盤という安倍政権が手にした政治的資産は、消費税や社会保障をめぐる国内合意の調達といったハードルの高い問題には振り向けられず、その一方で辺野古新基地に反対して登場した翁長雄志県政を圧迫することには徹底的かつ熱心に用いられた。

その手法も一括交付金の増減に始まり、強引な法解釈や県や名護市を頭越しにした集落単位への補助金交付など、実に芸が細かい。安全保障環境の変容に応じた態勢整備といった「大きな絵」は語られず、もっぱら「唯一の解決策」という決まり文句の反復ばかりである。細々とした微細な工作に用いる政治的エネルギーを、もう少し国政指導者に相応しい、歴史と国際情勢を踏まえた大局的な政治に向けられないものか。

そんな歯がゆさを感じていたのだが、なるほど考えてみれば普天間・辺野古問題に安倍首相が直接的に関わった気配はほとんどない。もっぱら菅義偉官房長官の管轄する問題となってきた。上述のような日常業務的な手練手管も、同氏のキャラクターの反映なのであろう。

菅氏にとっては、「県外移設」の公約を翻させ、水面下で「話しをつけた」はずの仲井真弘多前知事を選挙で下して登場した翁長知事と協議に応じることは、自らの政治手法の否定につながりかねず、自らの権勢を掘り崩す「蟻の一穴」と見えたのであろうか。また、翁長氏との感情的なしこりもあっただろう。だが結果として、菅氏が主導した強硬一辺倒の対応が、この問題を必要以上にこじらせてしまったことは確かである。筆者もこの問題について、自民党の重鎮が「官房長官がねえ・・・」と漏らすのを耳にしたことがある。

<以下、【下】に続く>

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