嘉手納爆音訴訟「国際法」で門前払い? ~対米訴訟で問われる最高裁判断

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政府説明変更ではしご外し?

 もう一つは、日本の裁判所と足並みがそろっていた政府の、国際慣習法をめぐる「はしご外し」的な説明の変更だ。

 日本政府の国際法解釈を担う外務省は、この問題について2019年1月までホームページでこのように説明していた。遅くとも1972年以降の国会答弁もこのラインに沿うものだった。

 「一般国際法(国際慣習法)上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取り決めがない限り接受国の法令は適用されず、日本に駐留する米軍も同様です。これは日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです」

 この説明には野党から「占領当時の日米関係」などと批判が根強く、外務省や防衛省のOB議員らが国会で外務省に「一般国際法」の根拠をただしてきた。だが外相は答弁を局長に任せ、局長は根拠を示さずに「これまでご説明している通り」「慣習法なのでどこかに書いてあるということではない」などと述べていた。

 批判は日本弁護士連合会からもあがり、2014年の日米地位協定に関する意見書で、政府の言うような「一般国際法の規則は存在しない」と指摘。さらに、米軍機の騒音や米兵による事件・事故など「米軍基地周辺住民の権利侵害の多くは日本法令の適用除外による」と述べた。

 そんな中で外務省は2019年1月、ホームページの説明を突然このように変えた。

 「一般に、受入国の同意を得て当該受入国内にある外国軍隊及びその構成員等は、個別の取り決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受け入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されると考えられています」

 「国際法」の言葉が消えた。日本の裁判所ははしごを外された形だ。この変更について、当時の河野太郎外相は国会で「政府の考え方に変わりはない。説明をよりわかりやすくした」と答弁したが、「一般に」という言葉はさらに曖昧だ。

 原告の住民らはこの経緯も最高裁に提出した書面で取り上げ、「一体いかなる法的根拠で米軍が日本の裁判権から免除されるのか。外務省の説明は論理破綻を来している」と指摘している。

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