「やはり、そうか…」
5月14日の知事の記者会見を聞き、思わずそう声を漏らしてしまった。ある程度予想はついていたが、「遺骨土砂問題」に対する知事の最終判断は措置命令止まり。業者と県とが協議することは明示されたが、新たな許認可のハードルを加えた訳でもなく、「今にも遺骨が新基地建設の建材として売り払われるのではないか」と、怯え焦る遺族の方々や、具志堅さんをはじめとするウチナーンチュの方々にとっては、真綿で首を絞められるような日々が続くことだろう。
会見の中で、知事が自らの「ウチナーンチュの心」に言及する場面があった。沖縄戦と、その後の米軍占領の経験を踏まえ、戦争に繋がるものの一切を拒否するウチナーンチュの心を発信する代表者である知事ですら、「遺骨で基地を作らせない」という判断を下せない。
知事は3月1日~6日に具志堅さんが県庁前でハンガーストライキをした際は現場に直接足を運んだし、タイムリミットの5月14日までヘイト集団と対峙しながらハンガーストライキを続けられた金武美加代さんの様子も見ていたはずだ。
それなのに、会見の中で措置命令の話は最後の第4項目だった。まるで数多ある県政業務の一つのような扱いだったし、「この話題をメインイシューにしたくないのか?」と勘ぐってしまいそうになった。
これが、国による沖縄分断政策の結果だ。憲法違反の辺野古新基地建設を強行する国が根本悪であるにもかかわらず、この問題は表面的には「沖縄県知事が県内業者の私権(鉱業権)を制限する」という県内対立の形を取る。結果、知事は「人として当然の判断」を下せず、沖縄には新たな内部分裂の種が埋め込まれることになってしまった。
沖縄のこの状況は、人命・人の尊厳より、国体・軍事・それに結びついた利権を優先する国の非人道性を映し出す鏡だ。そして、その鏡に映し出されているのは、国によるこれほどの暴挙に対し、当事者意識を持って抵抗できない一人一人のヤマトンチュの姿である。