北摂から全国へ―「遺骨土砂問題」意見書採択への取り組み

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4月28日、「屈辱の日」の直接行動

4月28日はサンフランシスコ講和条約の締結日。本土の独立と引き換えに沖縄が米軍占領下に入れられることが決まった日なので、沖縄では「屈辱の日」と呼ばれている。そんな「節目の日」に直接行動を起こせば、本土メディアの注目を引きつけることが出来るのではないか。その考えから、茨木市で直接行動を行うことにした。

具体的には、ユニオンの皆さん・上映会を通して繋がった市民派市議の皆さんのご協力を頂き、茨木市議会事務局に陳情を出して全議員への回覧をお願いする(あくまでコピーを配布するだけで、議案として議会に出すのを確約するものではない)と共に、茨木市長宛(当日は市長・副市長が不在だったので、「人権・男女共生課」の担当者に手交)にも陳情を出した旨の報告文を提出した。二元代表制をとる日本の地方行政は、地方議会と首長率いる地方自治体組織の両輪で成り立っている。議案提出権・再議請求権を握る首長の権力は強い。市議会・市役所両方に、茨木市として「遺骨土砂問題」に取り組む必然性を理解して頂くことが肝要だった。

 議会事務局長に陳情書を手交

陳情提出後は、茨木市役所前で街頭アピールを行い、行き交う市民の方々に陳情提出の報告と意見書採択を目指す動きがあることをお話しした。事前に連絡しておいた知り合いの新聞記者の方々は陳情提出から街頭アピールまで同行して下さり、朝日新聞毎日新聞で記事にして頂いた。

「人権・男女共生課」の担当者に「遺骨土砂問題」について説明
茨木市役所前で街頭アピール

総掛かり行動

陳状を出しただけでは、コピーが全議員に回覧されるだけに過ぎない。多忙な議員の方々が実際読むとも限らないし、意見書採択のための議案が出される保障は皆無だ。市民への訴えと、市議への働きかけを続ける必要がある。

茨木市では、「サポートユニオン with You」中心に、毎月19日(2015年9月19日、安倍政権が集団的自衛権行使を容認する「戦争法」を強行成立させたことにちなむ)に、市民の「総掛かり行動」を行ってきている。あくまで市民主導の運動で、市民自らマイクを握って政治や社会問題について思うことを話し、ビラをまき、そこに市議の方々も党派を超えて対等に参加する。

私も5月6月の「総掛かり行動」に参加し、「遺骨土砂問題」や、「土地規制法案」問題など、この間取り組んできた問題についてお話しした。他の市民の方々は、コロナ・ワクチン・オリンピック・雇用難・来る衆議院議員選挙のことなど、自分が関心を持って取り組んでいることについて話されるし、議員の方々は自らの市政報告もされる。

訴える相手は、帰宅ラッシュの駅前を慌ただしく行き交う市民の方々だし、ゆっくり足を止めて話を聞いたり、ビラを受け取ったりしてくれる人は多くない。

そんな街頭行動の現場で、沖縄で起こる問題を日本社会の構造悪と繋げてじっくり解きほぐすことは不可能だ。まして、「自分が沖縄への加害者としてのポジショナリティを持つ」と納得して頂くことは至難の業だ。

そこで、街頭アピールの際は、「国は遺骨で基地を作るという、人として許せないことをしている」「そんなことのために、国は税金を浪費し、コロナ対応が疎かになっている」など、生活苦を抱える市民に響く表現を心がけた。

駅前を行き交う市民の方々に、実際「遺骨土砂問題」をどれだけ周知できたかは未知数だ。それより大きな収穫は、「総掛かり行動」への参加を通し、市民派議員の方々と「遺骨土砂問題」についてじっくり話す場を得られたことだ。対話を重ねるにつれ、そうした議員の方々の関心は高まり、議員・会派間の調整や議会運営委員会への働きかけを買って出て下さる方々を見つけることが出来た。

6月19日の「総掛かり行動」。オリンピック開催是非を問うシール投票も行われた。

市議会議員への働きかけ

意見書採択のためには、各市議会での慣例に基づき、十分な準備・根回しが必要だ。茨木市は「全会一致主義」、つまり市議会本会議で全会一致採択が確実な意見書しか議案として上程しないとの慣例がある。

これは、あくまで「慣例」で、明文化された規定ではない。実際、賛成少数で否決された意見書もある。地域によって「慣例」は異なり、純粋な多数決主義の所もあれば、「4分の3以上の賛成」を目安とするところもある。そんな事情があるので、議員の方々との繋がりをできるだけ早く作っておき、出来るだけ「慣例」に沿った運動を準備することが大切だ。

「全会一致主義」は決して非合理なものとは言い切れない。「市民・市議会の総意」として国に送った方が意見書としての存在感・正統性は高まるし、一度否決された意見書と全く同じものが後の議会で可決されるとなると、地方の意志決定の一貫性が揺らぐ。「確実に全会一致採択が出来る意見書を、一度で可決してしまうべきだ」との原則にも、一定の必然性がある。

意見書採択を求める議案が上程されるかどうかは、議会運営委員会の判断に左右される。そこで各会派代表の合意が得られなければ、慣例を破ってでも提出に踏み切る会派がない限り、議案上程には至らない。従って、議会運営委員会が開かれる前に、各会派との面会を重ねつつ、支持議員を確保する必要がある。

茨木市の場合は、6月議会開会前、「サポートユニオン with You」の方々と私で市役所に足を運び、直接面談を行った。特に国政与党の会派の方々には、提出する意見書が「辺野古新基地建設」自体への賛否に関わるものではないこと、沖縄県議会で同じ意見書が全会一致採択されたことを強調した。スケジュールの都合で面談が叶わなかった会派については、親交を深めた市民派市議の方々経由で話を通して頂いた。

6月半ば、会派間調整を主導して下さった方から、「議会運営委員会での合意形成が出来、本会議での全会一致採択がほぼ確実」との連絡が入った。「人道上の問題だ」という点での合意形成が実現し、「辺野古」に直接言及しないとの条件が付けられたが、自民党系会派中心で意見書の文面を作成頂くことになった。そして6月22日、議案が茨木市議会本会議に各会派代表の連名で提出され、全会一致採択が実現した。

「メディアへの告知は実際採択されるまで控えて欲しい」とのことだったので、22日の採択直後に知り合いの記者の方に連絡を取り、翌日朝刊の記事にして頂いた。金沢市に続いて全国2例目とのことだったので、同様の意見書が出されている他の自治体を後押ししたかったからだ。

茨木市議会で採択された意見書

茨木市を越えた動き

一自治体から意見書をあげたところで、国がすぐ反応する訳がない。私たちは6月議会で、北摂地域の複数自治体で同様の意見書を採択させることを目指して動いた。隣町・吹田市にも直接足を運び、市民派会派の方々の協力で、全会派の控え室を回って賛同のお願いをすることが出来た。結果、6月28日、維新の会を除く賛成多数での意見書採択が実現した。

ここでは書き切れないが、茨木市の山下慶喜議員の尽力により、意見書採択を全国の自治体に呼び掛けると共に、全国の超党派の議員の連名で防衛省・内閣府に要望書を手交する動きも作られた。参議院会館での記者会見・アピールで茨木市での取り組みを発信することも出来、9月議会に向けて運動を広げることを呼び掛けた。

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