「本土という言葉を使わなくてよくなる日」
それでは、今後、どうなっていくのか。
先週、宮古島に出来た陸上自衛隊の駐屯地を取材し
対艦ミサイル部隊の発射訓練を見てきました。
対艦ミサイルというと、ロシア軍の巡洋艦「モスクワ」を
2発で沈没させたとされる、あのミサイルです。
宮古島に配備されているのは、同等か、おそらくそれ以上の性能のミサイルと思われます。
実際、ハワイなどで行なっている実射訓練では、
標的を一度も外したことはないと、ミサイル部隊の中隊長が話していました。
このように、いま南西諸島に次々と自衛隊の拠点がつくられ、
対空、対艦ミサイルの配備が進められています。
目的は、言うまでもなく、中国を、
第一列島線の内側に押しとどめておくことです。
インタビューした陸上自衛隊・宮古島駐屯地の司令官も
中国という国名を口にして、そのことを認めていました。
いざ事が起きたとき、軍事施設が真っ先に狙われるのは
ウクライナでも目撃してきましたが、
問題は、住民を助ける具体的な計画がほとんどないことです。
これこそ、国が主導してやるべきなのですが、
本格的な議論すらなされていないのが実情です。
さらにアメリカの海兵隊は、大きな基地は狙われるため、
分散して機動力を重視する、いう作戦に切り替えつつあります。
それならば、沖縄の巨大な基地は必要なくなるのではと考えてしまいますが、
「分散するためには、拠点も必要だ」ということのようで、そう簡単ではないようです。
とすると、何が起こるのか。
懸念されるのは、米軍基地が集中する沖縄は、
同時に「自衛隊の基地の島」にもなってしまうのではということです。
つまり、さらなる負担増につながりはしないか、私自身はそのことを最も心配しています。
ウクライナの戦争が起きて、尖閣や、台湾有事が盛んに議論されています。
沖縄の地政学上の重要性がますます、指摘されることになるでしょう。
しかし、沖縄に基地が集中している現状、
そのうえ、さらに負担が増すことは避けなければならない、
中国の台頭によって、ますます日米安保が重要になる中で、
沖縄に偏った負担を負わせ続けることは、
日米安保の不安定化にもつながりかねません。
防衛力を高めながら、沖縄の過重な負担をどう減らしていくか。
日本国内だけでなく、ハワイやグアム、オーストラリアなど
トータルで考えることが重要で、
ウクライナの問題で、浮き足立つことなく、
アメリカ側とじっくり話すべき時期が再び来ていると感じています。
50年前、私は小学校6年生でした。
卒業のとき「20年後のぼく」というタイトルで作文を書いたのを思い出して
引っ張りだして読んでみたのですが、
外交官として中国の日本大使館勤務が決まり、
なぜか新型コンコルドに乗って、
北京の空港に降り立つという場面が描かれていました。
残念ながら、外交官にはなれませんでしたが、
50年前、沖縄の復帰、そして同じ年の日中共同声明のニュースに触れて
子どもながら、平和な時代が来るという高揚感のようなものを
無邪気に感じていたんだなあと、なんだか複雑な思いを抱きました。
今年で返還50年を迎え、また新しい歩みが始まりますが、
本土で働くメディアのひとりとして
沖縄の人々と本土を分かつ「フェンス」をなくすために、
そして「本土という言葉を使わなくてよくなる日」が来ることを夢見て、
これからも取材を続けていこうと思っています。