沖縄県による日米地位協定改定要求
沖縄県は2018年1月から、基地対策課の職員を日本と同じく米軍が駐留するイタリアとドイツに派遣し、これらの国々における米軍基地の運用実態を調査している。調査の内容は主に、現地紙の関連記事の収集だという。
翁長雄志知事は前年9月、2000年に稲嶺恵一県政が作成した日米地位協定改定要求の内容を更新し、外務省と防衛省に提出した。2016年12月に名護市安部の沖合で、普天間飛行場所属のMV-22オスプレイが墜落・大破した事故時の教訓をふまえ、米軍施設外の事件・事故では、日本の捜査当局が現場統制も含めて主導できるようにする内容などを新たに加えた。
沖縄県は、調査を通じて米軍の事件・事故に関する他国と日本の対応を比較することで、日米地位協定がいかに不平等な内容かを明らかにし、県が求める日米地位協定の抜本的改定について全国世論の支持を広げたいと考えている。
県民の生活と安全をあずかる行政の立場にあって、具体的な解決策を提示しなければならないという点から、このような沖縄県の動きは十分に理解できる。
その一方で、これはあくまで仮定の話だが、もしも地位協定の専門家を名乗る人間がいて、日米地位協定の改定を主張し、沖縄県に対する助言を行おうとするようなことがあったなら、その者は真に専門家ではない。
問題は地位協定ではない?
というのも、米軍の事件・事故をめぐる問題には、日米地位協定に原因があるものとそうではないものとがある。そこを整理せずに、日米地位協定改定の議論を進めれば、仮に改定が実現した後も問題が残ることになってしまう。
たとえば、2017年12月に沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園と普天間第二小学校の真上で、普天間飛行場所属のヘリコプターが部品を落下させたとされる事件を考えてみよう。
そもそも、日米合同委員会は1996年に、普天間飛行場の航空機騒音規制措置の一つとして、「進入および出発経路を含む飛行場の場周経路は、できるかぎり学校、病院を含む人口稠密地域を避けるよう設定」することで合意している。
この合意は守られず、2004年には沖縄国際大学に普天間飛行場所属のヘリが墜落し、学長らが執務を行う本館ごと炎上する事故が起きた。そこで、2007年に再度、日米間で普天間離着陸経路が検討され、普天間第二小を含めた学校上空を避ける飛行経路が確認される。
だが、やはりこの合意も守られず、今回の連続事故に至った。なぜこのように、米軍の事故を防止するための日米間の合意は守られないのか。