奇跡の猫
公設市場の原点は戦後の「闇市」。大半の土地が米軍用地として接収される中、生活物資を販売する露店が身を寄せ合うように集まった。市場や商店が密集するにぎわいの空間を、沖縄の人々は親しみを込めて「マチグヮー」と呼ぶ。
マチグヮーの奥に進むにつれ、濃くなるのは心地よい気だるさだ。熟れた果実や色鮮やかな魚介、強い香辛料が鼻をくすぐり、「よそ行き」ではない三線の音色が耳に飛び込む。そんな界隈に溶け込むタオルギフト専門店「嘉数商会」(那覇市牧志3-6-41)の店先で、副店長のキッチー(14歳、♂)がお座りの姿勢で迎えてくれた。店主の嘉数信太郎さんが言う。
「おなかの脇にニコちゃんマークがあるでしょ。生まれつきです。奇跡の猫なんです」
店長は通称みーちゃん(本名マイケル・ジュニア、8歳、♂)。嘉数さんと雑談していると、朝のパトロールを終えて帰還した。みーちゃんはお手とハイタッチを器用に使い分ける。