沖縄知事選で見る「若者」

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少数精鋭の若者たち

 

彼らにある程度共通する傾向として、①大学進学者が多い(沖縄県内の大学進学率は約39%)、②県外・国外で生活した経験がある、③市民運動への参加経験がある、という点が挙げられる。つまり高学歴で、沖縄がおかれた状況を俯瞰する視野を持ち、政治参加に抵抗がない、少数精鋭の若者たちである。

最も重要なポイントは、二番目の点ではないか。玉城氏を応援した若者たちは、異口同音に「沖縄から離れるまで基地問題に関心がなかった」と語る。生まれたときから沖縄に米軍基地があることが「普通」で、意識したこともなかった彼らは、沖縄から離れて生活し始めたとき、米軍機の音が聞こえないことや、Yナンバー車両が道を走っていないことが、多くの日本人にとっては「普通」なのだと気づいたという。

また、県外の大学に進学して、講義の中で教員から、沖縄出身者として基地問題について所見を述べるよう求められて、関心や自覚を持つようになった者も多い。

一度離れることで、沖縄が「普通」ではないことを自覚するようになった若者たちは、SEALDs RYUKYUNDなどのシンクタンク、あるいは「辺野古県民投票の会」の署名活動に関わって、政治参加の経験を培ってきた。その経験が、玉城氏の選挙戦術にいかされた。

全国ニュース・紙の知事選報道では、玉城氏が辺野古移設反対を訴える場面ばかり強調されていたが、実際の街頭演説では、玉城氏の主眼はむしろ子供の貧困対策におかれていた。基地問題よりも子供の貧困対策を、前に押し出すように助言したのは若者たちだったという。

朝日新聞の出口調査によれば、女性の61%が玉城候補に投票したと回答、佐喜真候補に入れた38%を大きく上回った(男性では玉城:佐喜真=53%:46%とあまり差がない)。玉城氏が子供の貧困対策を公約の1番目に掲げたことと、無関係ではないだろう。

多数派の若者たち

 

さきほど、今回の知事選で投票した1020代の数は、投票者全体の1割程度だろうと書いたが、彼らの多くはどの候補に投票したのだろうか。NHK出口調査によれば、18歳と19歳の約4割が玉城候補、約6割弱が佐喜真候補に投票している。また、20代では玉城候補と佐喜真候補に投票した若者がほぼ半々で、わずかに佐喜真氏の方が多くなっている。

この結果は、勤務する大学の一つで行ったアンケート結果ともだいたい一致する。投開票日前に全学部・全学年の学生92人を対象に行ったアンケート(回答者90人)では、投票すると回答した学生の割合は47%で、53%が佐喜真候補、42%が玉城候補に入れると答えた。玉城氏に入れた学生は、辺野古移設反対を挙げた者が圧倒的に多かった。

興味深かったのは、佐喜真候補に入れた理由の最多回答が、「親に言われたから」というものだったことだ。佐喜真陣営の動員戦術が、学生の身近にも及んでいた実態を示唆していよう。

また、佐喜真候補に投票した学生の理由として、次に多かったのが経済政策だ。この背景には、2014年に翁長氏が知事に当選した後、選挙のたびに学生たちが、「オール沖縄は反基地だけで経済政策がない」とこぼしていた現実がある。基地問題を重視する翁長県政への若者の4年間の不満が、玉城候補にも投影された形だ。

くり返しになるが、玉城候補は実際には、辺野古移設よりも子供の貧困対策や中高生のバス通学無料化、保育士の確保・育成、観光と産業とのマッチング、県産ブランド海外輸出体制の強化などの経済政策を強調していた。だが、玉城候補の公約は選挙期間中には、子育て中の女性をのぞいて若者に浸透しきれなかったようだ。10月4日にスタートをきった玉城県政が、4年間かけて若者の信頼を得られるかどうかが、次の知事選の行方を左右するのかもしれない。

 

※本稿はWEBRONZAに掲載された拙稿「少数精鋭の若者たちが支えた沖縄知事選」

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2018100500002.html)からの抜粋です。

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