沖縄県知事選挙と「若者」世代

この記事の執筆者

若者の「基地疲れ」「辺野古疲れ」

 

近年、沖縄では、沖縄戦や米軍統治、米軍基地の建設、1972年の日本復帰という歴史を経験した年齢の高い世代と、生まれた時から米軍基地があり、沖縄は日本の一県であり、より身近な生活の問題に関心がある若い世代との間で認識の違いが顕著に表れている。

2016年の琉球新報社の世論調査によれば、沖縄県民に気になる問題について尋ねたところ、60代以上では、「基地問題」が一番目であるのに対し、50代以下では、「所得の低さ」が一番となった。特に、20代と30代では、「所得の低さ」と答えたのはそれぞれ60.1%と65.2%であるのに対し、「基地問題」と答えたのはそれぞれ37.6%と35.9%である(琉球新報『2016沖縄県民意識調査』)。つまり、若者世代は、年齢の高い世代と比較して基地問題よりも経済・所得により大きな関心がある。

さらに若者世代の方が、米軍基地に対して肯定的な意見が見られる。2017年のNHKの世論調査によれば、沖縄に米軍基地があることに対して、沖縄全体では44%が容認、48%が否定的だった。しかし、世代別で見ると、復帰前世代が肯定24%で否定53%と全体として否定的であるのに対し、復帰後世代は、肯定65%、否定42%と肯定が多数である。

近年、沖縄の若者の「基地疲れ」「辺野古疲れ」が指摘されるが、この傾向は、筆者も日々大学で学生と接していて肌で感じることである。知事選挙の前、筆者が100人の学生を対象に任意のアンケートを行った。任意のアンケートで次のように答えてくれた。

「基地問題については沖縄のメインの問題かもしれませんが、先が長いと感じるので個人的には経済や貧困問題から取り組むべき」
「辺野古の問題にとらわれすぎていて、基地以外の沖縄の問題の解決策が遅れている気がする」。
これに加えて、普天間移設問題・基地問題について、
「私たちが意見したところでこの現状が変るとも思えないというあきらめ感も少なからずある」
「沖縄県がどれほど抵抗しても国の裁判で負けてしまえば結局、移設は実行されてしまうような気がする」
と答える学生もいた。

このように、長年にわたって未解決であり、いくら民意を示しても強硬な姿勢を続ける日本政府との対立から、基地問題や普天間問題に嫌気がさしている若者は多い。

「米軍基地反対を長年唱え続けても問題は解消されていないし、それでも基地問題は考える必要があるから息苦しい社会だと思う」
という閉塞感を指摘する学生もいた。

もっともこのことは、多くの若者が基地の現状に満足していたり基地問題に全く無関心であったりすることを意味しない。2017年のNHKの世論調査でも、復帰後世代の57%が沖縄の米軍基地について「本土並みに少なくすべき」と答えた。2016年の琉球新報の世論調査でも、沖縄米軍基地のあり方について、「維持すべきだ」と答えたのが、20代で23.1%、30代で16.0%、「どちらともいえない」と答えたのが20代で35.8%、30代で33.7%であった。これに対し、「縮小すべき」と答えたのは20代で31.2%、30代で43.0%にものぼったのである。

このことは、多くの若者世代が現状の基地のあり方について決して満足しているわけはなく基地縮小を望み、「どちらともいえない」も含め、複雑な感情を抱いていることを示している。
佐喜眞陣営も辺野古移設については明言しなかったが「基地の整理縮小」と「日米地位協定の改定」を公約に掲げていたことは、むしろ沖縄における世代やイデオロギーを超えたコンセンサスを示すものとして重要である。

この記事の執筆者