「沖縄に要らないものは本土にも要らない」論を問う

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5.民主主義に基づいた解決とは

 

安全保障の問題、つまり日米安保をどうするかは、直接的に沖縄県知事の権限ではない。それは日本全体に問い、国民的議論を経ることで解決できる問題だからだ。
「新しい提案」で私たちは民主主義に基づいた解決を提示している。民主主義とは「多数決の原理」と「少数者の権利の擁護」という二つの原則からなり、これは民主主義国家の基盤を支える一対の柱だ。多数決の原理は公共の課題に関する決断を下すための手段であり、少数者の抑圧への道ではないからだ。

8割を超える国民が日米安保を容認している現状において、国政選挙において日米安保破棄等を明確に争点として掲げ、多数の信任を得ることなしに「沖縄に要らない基地は全国のどこにも要らない」と頑に主張することは、普天間・辺野古問題の解決の道を閉ざし、本土に住む日本人が当事者としての責任意識を持つことを妨げていないか。

公共の課題である安全保障政策における多数決を尊重せず、または多数決で決することを求めず、そのことによって沖縄という少数者の権利を害しているという、民主主義の二つの原則に反する結果を招いていないか。

よく誤解されるのだが、私たちの「新しい提案」は、辺野古新基地問題を「国民的議論により解決する」のではない。①不合理な区分=差別である辺野古新基地建設を止め、②普天間基地の代替施設を本土のどこにおくか(安保破棄・海兵隊海外撤退も含めて)国民的議論で決めるのであり、①に関しては国民的議論によるのではなく、差別をやめるという民主主義として当然の帰結である。では、普天間基地はどのように解決するのかというのが、②の国民的議論である。つまり①だけを提案しても、どうやって解決するのかという疑問を持ち差別を止めようとしない人たちに向けて、②をセットにして提案する意味があるのだ。

②に関しては、それだけでは当事者意識を持った議論が起こるものではなく、最終的には、本土の人たち自身が、この問題を日本全体の問題であるとの認識に努める以外にはない。民主主義は、社会的正義を促進することができるが、この過程は自動的に起こるものではなく、市民の側の行動が求められるからだ。
したがって、まずは特定の候補地を示さず、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地として、普天間基地の代替施設候補地の絞り込みや統一的な基準については、「辺野古が唯一」を瓦解させた後のステージとして、日本人の「責任」として、様々な観点から徹底的に議論し決定すべき事項だ。

その前提として、①及び②という民主主義として当然の手続きに多くの人の合意が得られれば、「辺野古が唯一」は瓦解する。

6.沖縄県議会での意見書採択に黄色信号

 

私たちは「新しい提案」で、「辺野古が唯一」を瓦解させるため本土に住む人が出来ることとして、あなたの住む市町村への新しい提案に基づく陳情の雛形も掲載している。

沖縄県議会には、2017年6月29日に第79号「辺野古新基地建設の中止と、普天間基地代替施設の沖縄県外・国外移転について、国民的議論を深め、民主主義及び憲法に基づき公正に解決するべきことを求める陳情」を提出しているが、継続審議となっている。そこで18年10月17日には第95号で同陳情に関し「早期採択を求める陳情」も行っている。

冒頭で述べた小金井市議会の「新しい提案」に基づく意見書採択を求める陳情は当初、共産党会派の4議員も賛同し陳情は可決されたが、それに伴う意見書の採択については、共産党会派が賛意を撤回し、本会議で採決が見送られる異例の事態となった。

共産党のこの「翻意」について、小池晃書記局長は「とことん共産党」(10月10日放送)の中で、「日本共産党は普天間基地の無条件撤去を主張してきたことから、代替施設について、沖縄以外の全国全ての自治体を候補地とすることという部分に政党として賛成することはできない」と説明していた(2018.10.12しんぶん赤旗)。
しかし、これは誤った解釈であると言わざるを得ない。「新しい提案」は、「その際、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行うこと」を示しているにもかかわらず、意図してか意図せずにか、それを捨象していたからだ。
私たちの意見書案は先述のように「県外移設前提」や「県外の移設先探し」ではない。

そこで、私たちは11月19日付け文書で、日本共産党中央委員会、志位和夫委員長、小池晃書記局長、赤嶺政賢衆議院議員宛てに「東京都小金井市議会の意見書採決見送りに関する要望書」を送付し、再考を求めた。また、この問題は大きく報道され、多くの議論をまき起こしたことも幸いしたのか、小金井市議会では、最終的に各会派が文言の修正に合意をしたことで2018年12月6日に意見書採択にこぎ着けた。

なお、私たちの陳情は、

1.辺野古米軍新基地建設工事を直ちに中止し、米軍普天間飛行場を運用停止にすること。
2.米軍普天間飛行場の代替施設について、沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とすること。
3.その際、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的議論を行うこと。
4.国民的議論において米軍普天間飛行場の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、その結果責任を負い、民主主義及び憲法の精神に則り、一地域への一方的な押付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定すること。

としており、小金井市議会への陳情もこの文言を用いている。

しかし、「沖縄に要らないものは本土にも要らないという思想を出発点とすべきで、上記2があるのは納得できない」という共産党の主張を踏まえ、私たちは小金井市議会が修正合意したステップでも構わないと考えている。
したがって、修正した文言は「新しい提案」においても、譲歩案として上記小金井市議会が採択した意見書案を提示している。しかし、小金井市議会が採択した文言においても、同様の理由で、本家本元であるはずの沖縄県議会の12月議会でその採択が危ぶまれている。この問題はまだ決着がついていなかったのだ。
12月沖縄県議会では、12日に県議会での米軍基地関係特別委員会(軍特委)における審議日程が協議されたが、この陳情における陳情者意見陳述に関し、社社結、おきなわ、共産、公明、維新は賛成したが、自民が賛成せず、全会一致が慣例の沖縄県議会では「陳情者意見陳述はなし」となった。

私は12月13日に、共産党県議会会派と同陳情に関して協議したが、 日本共産党県議団団長の渡久地修議員から、普天間は無条件撤去であり、無条件撤去の定義とは「沖縄県内のみならず、県外、そしてグアムも認めない。アメリカ本国移転のみ」ということであった。
沖縄県議会はこれまで何度も、普天間基地や在沖米海兵隊の国外・県外移設を要求する意見書や決議を合計6回も共産党会派も含め全会一致で可決採択している(2)。このこととの整合性について同議員は、全会一致で意思を示すために応じたものであって、「県外」移設を容認したものではない、とのことであった。

陳情採択に関しては、全会一致をこれまで慣例としてきたのであり、いくつものハードルがあるとのことで同議員からは、この陳情を採択したいという前向きな発言は残念ながら一切見られなかった。

沖縄県議会の軍特委における陳情の審理は、12月17日の1日だけ行われるが、陳情の採択は黄信号が灯っている。小金井市議会の意見書採択を受け全国の市町村で陳情を申し立てる動きが広がる中、東京都の小平市議会でも同様の議論が起こっているという。

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