県民投票と基地経済の呪縛―「下河辺メモ」から変わらぬ現実―

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「下河辺メモ」の分析

 

当時、橋本龍太郎首相のブレーンだった下河辺淳氏は、96年県民投票と97年住民投票の名護市有権者の投票結果を比較している。97年の方が地元の問題として関心が強く、投票者は9724人増えた。

 

下河辺氏は、この増大分が賛成票に流れたとみる。住民投票では「基地反対票が70%を超えると考えていた」下河辺氏の予想に反し、約45%の有権者が賛成に回ったのは、国の振興対策への期待だというのが同氏の見立てだった。

職を辞した比嘉市長の振興と引き換えの基地受け入れを、下河辺氏は、「過半数を超えるということですまされない複雑で悩み深い市民の判断にしたがったもの」「それだけ北部地区の人々の暮らしが難しいということ」と分析する。

同氏は、96年の県民投票も「基地市町村は投票率が低く、かつ基地受入れ票が相当数でたことが特色」だと考察。「いつまでも米軍の基地が沖縄に集中していることに賛成する県民はいないと思う」が、「基地市町村は基地経済に依存」し、「基地移転後の経済の見込みがたたない」からだと指摘している。

2019年度新設の沖縄振興特定事業推進費

 

この言葉は残念ながら過去のものではない。

今回、県民投票ボイコットを表明した5市は、実は歳入に占める基地関係収入の割合が低い。普天間飛行場のある宜野湾市の基地関係収入は、直近の8年間で3.6%から微増して5%。嘉手納基地のある沖縄市は、逆に9%から5.8%まで減少している。キャンプ・コートニーとホワイトビーチのあるうるま市も、3.2%から2.6%まで低下した。

他方、これらの3市は観光収入があまり伸びていない。沖縄を訪れる観光客の訪問先が那覇市、美ら海水族館のある北部西海岸、リゾートホテルが立ち並ぶ中部西海岸に集中しているためだ。

石垣市と宮古島市は観光客数の伸長が目覚ましいが、観光収入は財源として不安定で、インフラ整備など長期の予算が必要な事業計画が難しいという。両市が自衛隊配備を受け入れた理由の一つが、補助金などの「安定的な」財源獲得だとされるが、配備計画は遅れている。

財源に悩む5市の目の前に、安倍晋三内閣がぶら下げたのが、2019年度から創設される沖縄振興特定事業推進費だ。政府が沖縄県を通さず市町村に直接配分する事業費で、同年度の沖縄関係予算案3010億円のうち30億円分をあてる。事業費を欲する市町村が、政権への忠誠心を見せるために、県民投票を踏み台にしたとて不思議はあるまい。

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