県民投票と基地経済の呪縛―「下河辺メモ」から変わらぬ現実―

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体を張った県民投票全県実施訴え

 

2019115日から5日間、「『辺野古』県民投票の会」代表の元山仁士郎氏が、住民票を置く宜野湾市の市役所前で、ハンガーストライキを行った。

26歳だった元山氏が、20184月に設立した同会は、2カ月間で10950人の署名を集める(うち有効署名92848人)。だが、玉城デニー新知事の下で、沖縄県議会が10月末に県民投票条例を制定したのも、つかの間。石垣市、宜野湾市、うるま市、宮古島市、沖縄市が投開票のボイコットを決定。

元山氏は5市が翻意するまでハンストを続ける意志だったが、ドクターストップと周囲の説得で中止した。

米海兵隊普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸の埋め立て工事の賛否を問う今回の県民投票をめぐって、当初は移設賛成派よりもむしろ反対派からの批判の方が目立った。批判する人々の念頭にあったのは1996年の県民投票と翌年の名護市住民投票の結末だ。

過去の二度の住民投票

 

199698日に行われた県民投票は、連合沖縄が県民投票条例の制定に必要な署名数を集めて実現する。日米地位協定の見直しと県内の米軍基地の整理縮小についての賛否を問うもので、結果は投票率59.53%、見直し・基地縮小賛成89.09%となった。

ところが大田昌秀知事は、県民投票告示前日の代理署名訴訟の最高裁判決で県が全面敗訴したのを受け、県民投票の5日後に軍用地の代理署名に応じる。何のための県民投票だったのか。尽力した人々はぼうぜんとした。

97年の1221日には名護市住民投票が実施される。名護市辺野古沖の海上ヘリ基地建設の賛否を問う住民投票を求めて、21の市民団体が有権者の46%に相当する数の署名を集めた。比嘉鉄也名護市長は「賛成」、「環境対策や経済効果が期待できるので賛成」、「反対」、「環境対策や経済効果に期待できないので反対」の4択で住民投票を実施。投票率は82.45%に達し、賛成45.31%に対して反対が52.85%と半数を超えた。

だが比嘉市長は、住民投票の3日後、北部振興策と引き換えに基地建設を受け入れて辞任する。

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