在沖海兵隊のグアム移転の真実

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事実に反する菅発言

 

菅義偉官房長官は、201810月の記者会見で、民主党政権期に「(辺野古)移設問題が迷走して進展しなかった。その時に、米国の議会で、グアム移転事業にかかる資金支出が凍結された時期があった」と説明。安倍晋三内閣が「目に見える形で(辺野古移設)工事を進めた結果、資金凍結は全面解除された」と発言した。

菅氏の発言は、2006年に日米両政府が合意した、在日米軍再編の実施過程のことを指している。

20065月、普天間米海兵隊飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古沿岸(名護市)への移設完了を条件に、在沖海兵隊の司令部要員約8000名と、その家族約9000名の米領グアム島への移転が日米間で合意された。

20048月、普天間飛行場と隣り合う沖縄国際大学に、イラク戦争への出撃訓練中の米軍ヘリが墜落・炎上する事故が発生。沖縄県の抗議を受けた小泉純一郎内閣が、アメリカに対して「沖縄の負担軽減」を求めたことによる、在日米軍の再編措置だ。

グアムには、アンダーソン米空軍基地とアプラ米海軍基地があり、兵庫県淡路島とほぼ等しいグアム島の面積の約3割を占めている。沖縄県の約4分の1しかない小さな島に、さらに米海兵隊基地が増えることになった。

冒頭の菅氏の主張は、完全に事実に反している。在沖海兵隊のグアム移転に関して、米議会が予算凍結と解除を行ったことは、文化遺産を守ろうとする地元住民の闘い、軍事予算削減を求める米議会の意向、そして環境破壊を恐れる米環境保護庁の要求の結果である。

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