2030年代までかかる移転
グアムは、海岸に沿って舗装された道路が島を一周しており、内陸部の主要部分も舗装道路が整備されている。これは実のところ、主要産業である観光のためではない。グアム島の約3割を占拠する米軍が、島内移動のために作った。
米政府自然保護区につながる道は、これまで米軍にとって不要だったので舗装されず、穴ぼこだらけの砂利道だった。だが2019年3月、舗装工事が開始される。自然保護区に隣接した、実弾射撃場が建設されるからである。沖縄からグアムに移ってくる、米海兵隊の訓練場だ。
辺野古移設と海兵隊のグアム移転が切り離されても、2019年3月現在、基地の建設も部隊の移転も進んでいない。合意変更の背景にあるグアム現地と米議会、米環境保護庁による批判に、米軍が応えるのに時間がかかったせいだ。
日米合意の変更と、米軍の移設工事計画の見直しを受けて、議会が予算凍結を解除したのは2014年末。海兵隊基地建設の環境影響評価の完了が2015年。絶滅危惧種に関する見解書発表は2017年。しかも、グアムに駐留する米軍の数が急速に増大して、インフラ崩壊が起こらぬよう、グアム現地の移設工事の期間が、7年から13年にのばされた。
日本の防衛省は、在沖海兵隊のグアム移転開始時期を2020年代前半としているが、移設は2030年代までかかるだろう。
「沖縄の負担軽減」を実現できない現政権
ここまで書いてきた通り、民主党のせいで在沖海兵隊のグアム移転が中断され、安倍内閣のおかげで再開した、という菅氏の発言は、まったくもって事実ではない。むしろ、安倍内閣の間は、普天間飛行場の辺野古移設も、在沖海兵隊のグアム移転も実現できないことは、もはや明らかになっている。
一つは、辺野古沖の軟弱地盤の存在が発覚し、移設工事の費用や工期が不確定となったことだ。沖縄県の独自試算によれば、軟弱地盤の改良工事に要する費用は約1500億円、辺野古沖の埋め立て費用の合計は約2兆5500億円に達するという。総工期も13年にのびると積算されている。もう一つは上述の通り、在沖海兵隊のグアム移転完了が、2030年代までずれ込む。
歴代のどの政権よりも、辺野古移設をひたすら推し進めてきたのに、なんとも皮肉なことだ。