騒音問題の本質は日米地位協定
日米地位協定には、米軍航空機の飛行に関する規定がない。協定の第2条は、米軍が、日本政府から提供された施設・区域を使用すると定めている。だが、施設・区域の上空は、提供範囲に含まれない。その外での米軍の活動も、想定していない。
米軍が、日本領空を飛行する根拠としているのは、第5条第2項。航空機は、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域に出入し、これらのものの間を移動」できる、と書かれた一文だ。実際には、米軍航空機の移動は訓練の一環であり、米軍は、訓練に必要だという理由で、深夜早朝の離発着や低空飛行を正当化している。
しかし、日本政府は、米軍の飛行訓練が、北朝鮮や中国に対する抑止力として重要だという考えから、飛行を規制しようとしない。SACOの話し合いにもとづき、1996年に日米合同委員会で合意された、普天間と嘉手納の航空機騒音規制措置は、米軍航空機の深夜早朝・日曜の飛行自粛や、最低高度を定めている。だが、米軍が運用上必要だと判断した場合を例外とし、実質的には、規制は存在しないに等しい。
騒音規制措置における、「できる限り」学校、病院など人口密集地域の上空の飛行を避ける、という合意も守られていない。その結果が、2004年8月に起きた、沖縄国際大学への普天間所属ヘリ墜落事故だ。事故後にあらためて、普天間所属の米軍航空機が学校上空などを飛ばないよう、ガイドラインが策定された。にもかかわらず、2017年12月、沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園と普天間第二小学校の真上を飛ぶ、普天間所属ヘリが部品を落下させる。緑ヶ丘保育園については、海兵隊は現在に至るまで、その事実を認めていない。
在日米軍の統合運用が進む中、SACOのような、個別の米軍基地に関する「合意」や「移転」では、騒音は軽減されない。問題の根源は、日米地位協定と、それを支える日本の安全保障の対米依存にある。
※本稿は2019年5月24付『沖縄タイムス』「思潮2019」(連載)を加筆修正しました。