拡大する米軍機騒音と日米地位協定

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普天間、嘉手納、岩国のうち最も騒音がひどいのは?

 

20年かけて実現した、騒音軽減イニシアティヴの成果はあったのか。沖縄県環境調査データを見ると、20072017年の普天間飛行場と嘉手納基地の「うるささ指数(W)」は、若干の減少傾向にある。だが、騒音発生回数は年ごとに大きな変動があり、全体として改善されていない。原因は、岩国所属の航空機の飛来増大だと考えられる。

また、20184月から20193月にかけて、普天間飛行場、嘉手納基地、岩国飛行場の周辺で測定された、航空機の「うるささ指数(Lden)」を比較するとどうか。沖縄県環境調査データをもとに、普天間周辺の測定局12カ所、嘉手納周辺の測定局15カ所で測定された、速報値の平均値を計算したところ、普天間の年間平均は52.5Lden。嘉手納は53.2Lden。岩国市が測定した、岩国飛行場周辺5カ所の平均値を計算すると、年間平均は53.5Lden。どの米軍基地もほぼ変わらない。

これら3つの米軍基地は、月別平均の「うるささ指数(Lden)」とその変動も、おおむね一致している。2018年6月12日に実現した米朝首脳会談の影響で、同年8~9月の米韓合同軍事演習が中止になった折には数値がぐっと下がり、10月29日から11月8日にかけて実施された日米共同統合演習の期間には上がった。

 

進む米軍基地の統合運用

 

このことは、岩国・普天間・嘉手納の統合運用が進む現状を、如実に反映している。米海軍佐世保基地(長崎県)も、統合運用に不可欠な存在だ。米国は、ドナルド・トランプ政権になってから、北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の海洋進出に対抗して、アジア太平洋地域での航空・海洋攻撃能力を強化してきた。

佐世保基地に現在配備されている、強襲揚陸艦「ワスプ」に代わり、2019年中に配備予定の大型強襲揚陸艦「アメリカ」は、ワスプよりも、航空機用の格納庫などが充実している。岩国飛行場所属のF35Bステルス戦闘機や、MV22「オスプレイ」輸送機を艦載し、在沖米軍と統合運用する計画だという。アメリカが配備されれば、沖縄における騒音発生状況は、さらに悪化することが予想される。

小谷哲男明海大学准教授によれば、現在の米軍の作戦上のキーワードは「マルチドメインバトル(多次元戦闘)」。陸海空軍および海兵隊の4軍が、作戦ごとに部隊を分散させ、自律性を保ちながら、敵への一斉攻撃を行うという内容だ。

米軍各軍が導入を進めるF35型ステルス戦闘機は、各部隊が通信ネットワークを用いて、他部隊の戦況を把握できることになっている。岩国・佐世保・嘉手納・普天間に所属する各米軍部隊は、有事を想定した日々の訓練を通じて、F35などの最新装備を使いこなし、運用の統合性を高めることを目指しているのだ。

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