衆院選の結果は厳しいものだった。自公政権があれほど立憲主義・地方自治を蹂躙したというのに、「市民と野党の共闘」は政権交代を実現出来なかったからだ。「市民の、市民による、市民のための政治」を取り戻す選挙戦になるとの期待が高かった分、野党共闘の価値が想定以上に浸透しなかったことに、私も大きなショックを受けた。立憲民主党の枝野代表は辞任に追い込まれたが、それが「野党共闘という発想自体誤っている」との言説の流布を招かないか心配だ。
一つの政党内部の責任追及と、「市民と野党の共闘」が持つ思想・運動形態上の意義とは別問題だ。そもそも、今回の野党共闘の意義は、市民の側から今後の日本社会のあるべき姿のグランドビジョンと、それを現実化するための運動の姿を提示し、結果立憲4野党が呼応・団結したことにあった。市民の生活上の課題を基に練り上げた政策案だったからこそ、党派を超えた理念的団結を生み出せたのである。このことは、一度の選挙の結果に依存しない普遍的価値を持つはずだ。
私自身は地元・大阪9区の野党統一候補の社民党・大椿ゆうこさんの選挙運動に加わった。大阪9区の市民は箕面市・池田市・能勢町・茨木市・豊能町の頭文字を取った「MINITs 9」というグループを作り、大椿さんと9回に渡る政策会議を重ね、市民病院の欠如や農村部の生活苦など、市民の実生活上の課題から政策を練り上げた。市民自治の力を育める、「将来に繋がる選挙運動」をしたいというのは、大椿さんのみならず、「チーム大阪9区」全員の理念となった。
市民が主体的に駅での朝立ち・夕立ちや、団地・商業施設回りに参加し、政策への支持を呼び掛けた。政策ビラの受け取りや応援する市民からの声かけは日ごとに増し、大阪9区での社民党の比例得票数 (6942票)は、2017年の衆院選時 (4043票)を上回った。党本部や候補者が押しつけたものではない、「自分たちの政策」で選挙戦を戦う中で、私たちは市民自治を実践する力を確実に身につけられたと思う。
そのことと選挙結果が対応しないのは、非常に残念だ。特に大阪では、維新・公明に小選挙区を独占された。大阪府は全市町村に女性議員がいることを誇っており、今回の衆院選でも女性の市民派候補が多かったのだが、小選挙区当選者は全員男性という結果になった。「市民と野党の共闘」が「選挙のための野合」だという自公維新の根拠なきネガティヴキャンペーンを打破しきれなかったとすれば、「市民と野党の共闘」の意義・価値の伝え方に不足があったのかも知れない。