「遺骨土砂問題」意見書運動は一つの好例
市民の目下の課題は、決して個別政治家の責任を糾弾することではなく、「市民と野党の共闘」の実質的な意義・価値を証明し続けることだろう。一回の選挙結果に一喜一憂し、せっかく育まれ始めた市民自治の力を弱めては勿体ない。そのためには、地方議会の場において、個別の課題に絞った「市民と野党の共闘」の実績を積み重ねることが必要なのではないだろうか。
私が取り組んできた「遺骨土砂問題」意見書運動は、一つの好例になると思う。国は、沖縄戦戦没者の遺骨を含む沖縄島南部の土砂を用い、辺野古新基地建設のための埋め立てを行う計画を立てている。そのことに抗議し、土砂採取中止と戦没者遺骨収集の推進を国に求める意見書を、各地の地方自治体で可決させる運動だ。
沖縄県議会で4月15日に全会一致可決された意見書を雛形にし、「辺野古」「基地」に言及せず、あくまで「遺骨を含む土砂の採取に反対」「戦没者の遺骨収集を推進すべき」と主張する内容に絞れば、可決の可能性は極めて高い。この意見書は、2016年に超党派の議員提案で全会一致成立した「戦没者遺骨収集推進法」を根拠にしている。自公維新などの「辺野古推進派」にとっても、「自分たちが賛成した法律の精神は遵守すべき」と主張するに過ぎないのだから、反対する理由がない。
実際、100を超える沖縄県外自治体ですら意見書可決を果たしており、大阪市(83議席中40議席が維新!)・堺市・福岡市議会や奈良県・埼玉県議会のような政令指定都市・都道府県議会でも全会一致が実現した。
ただ、地方議会でのロビイングはいつも順風満帆とは限らない。いくら市民が「『遺骨土砂問題』意見書は戦没者の遺骨収集に関わる人道上の問題に絞ったものだ」と訴えても、保守系会派が「辺野古新基地建設反対意見書なのではないか?」と邪推し(そもそも沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設強行自体が憲法違反で、「遺骨土砂問題」意見書も、新基地建設の外堀を埋める意図を込めたものではあるが…)、ロビイングが難航する場合も少なくない。そうなった際、市民と立憲野党・市民派会派の地方議員が連携し、保守系議員を説得して意見書可決を目指す運動を起こせば、「市民と野党の共闘」を実践することが出来る。可決を実現出来れば、「市民と野党の共闘」の一つの「成功体験」を獲得できる。
「遺骨土砂問題」を先頭に立って問題提起してこられた沖縄の遺骨収集ボランティア・具志堅隆松さんは、7月に全国1743ある全ての地方議会宛に、意見書採択の要望書を郵送された。ただ、その中の大半の自治体は、未だこの意見書の議論すら行っていないのではないか。12月議会も迫っているので、そうした場所で意見書可決を目指す運動を早急に起こし、衆院選で生まれた「市民と野党の共闘」の勢いを発展させられれば良いと思う。