「米軍基地は必要か」県民意識の変遷
NHKが沖縄県民を対象に定期的に実施してきた世論調査に、「復帰後も沖縄にアメリカ軍基地が残っているが、どのように思うか」という質問項目がある。沖縄が米軍の占領統治から日本の施政権の下に復帰した1972年には、日本の安全にとって「必要」「やむをえない」と答えた回答者が合わせて26%だった。一方、「必要でない」「危険」は合わせて56 %で、「必要+やむをえない」を上回った。この傾向は、在沖米兵3人が小学生の女児一人をレイプする事件が起きた95 年まで続く。
しかし、実は95年には「必要でない+危険」が初めて半数を割っていた。そして復帰から30 年後の2002 年には、「必要+やむをえない」が大きく増加して半数近くとなり、ほぼ同じ割合とはいえ初めて「必要でない+危険」を上回る。増加したのは「やむをえない」で、逆に「必要でない」は減少した。さらに12年には、「必要+やむをえない」が「必要でない+危険」に差をつけて上回ったのである。ただし、17年には再び「必要でない+危険」と「必要+やむをえない」の割合が逆転した。
国際環境の厳しさ増大
2000年代の沖縄県民意識の変化には、どのような背景があるのだろうか。
1998年には北朝鮮が事前通告なしに発射した弾道ミサイル、「テポドン」が日本列島上空を通過し、北朝鮮への脅威認識が日本国内で高まった。また、2001年にはアメリカで同時多発テロが起きた。これらの出来事が、02年に沖縄の米軍基地は「必要+やむをえない」と答えた沖縄県民の割合が、「必要でない+危険」を初めて上回った理由だろう。
さらに、04年には尖閣諸島に中国人活動家が上陸し、民主党政権が発足した翌年の10年には尖閣沖で中国漁船が拿捕されて、船長が起訴された。12年には尖閣国有化で日中間の緊張が頂点に達する。12年に「必要+やむをえない」が過半数を超えた理由は対中関係だと考えてよい。
14年末から現職を務める翁長雄志沖縄県知事が、革新陣営を支持基盤としながら「日米安保には賛成」と繰り返し明言している背景にも、このような沖縄県民の意識がかかわっているといえよう。