在日米軍「印象操作」の背景を探る

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在日米軍によるフェイクニュース?

 

2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」では、大賞の「忖度」「インスタ映え」に次ぐトップ10に「フェイクニュース」が入った。同賞のホームページは、フェイクニュースとは「ネット上でいかにもニュース然として流布される嘘やでっち上げ」だと説明している。

そのフェイクニュースまがいの発信が最近目立っているのが、在日米軍である。

『毎日新聞』は2017118日、九州防衛局と長崎県西海市の協定に反して、米海軍佐世保基地のエアクッション型揚陸艇(LCAC)夜間訓練が佐世保湾外海で実施された、と報じた。すると、在日米軍司令部が翌日、夜間訓練をしないとの日米合意は存在せず、『毎日新聞』の誤報に抗議し修正を要請する、という声明をホームページとツイッターに掲載した。

 

在日米軍司令部が否定した協定は、九州防衛局のホームページにも掲載されており、事実として存在する。また、『産経新聞』が117日、『朝日新聞』も118日に『毎日新聞』と同じ内容の報道を行ったが、英文でも同記事を配信した『毎日新聞』だけが抗議の対象になった。

ここで問題にしたいのは、在日米軍司令部が『毎日新聞』に対して直接抗議する代わりに、抗議声明を一方的にインターネット上で流したことだ。同司令部の声明は、司令部のツイッターのフォロワーを中心に2万件近くリツイートされ、「毎日新聞がフェイクニュースを報じた」という趣旨で拡散された。

また、20171011日に、米海兵隊普天間飛行場の大型輸送ヘリCH53Eが沖縄県東村高江の民有地に不時着し炎上した。米軍側は1215日、事故を起こした土地の所有者の自宅を訪れて「感謝状」を手渡し、その場面の写真と説明を在日米海兵隊のツイッターに投稿した。

16日の『琉球新報』や『沖縄タイムス』の報道によれば、土地所有者の男性は、米軍側から「食事会」に招待されて断ったところ、当日の朝9時に米軍から電話で理由を告げずに訪問を打診され、その30分後に訪問があった。男性は後日、東村役場を通して「感謝状」を米軍側に返却したが、その事実は在日米海兵隊のツイッターでは触れられず、15日の投稿もそのまま残されている。

 

地位協定改定の芽をつむ

 

なぜ在日米軍は、このように「印象操作」のような行為を行うのだろうか。

20151月に米国務省が公表した「地位協定に関する報告書」では、「米軍駐留の安全保障上の必要性よりも、米軍による主権侵害に対して受入国の世論が意識を向けたとき、問題が生じる」と指摘されている。日本政府と地元との合意を無視した米軍訓練や、日本国内の民有地での米軍事故は、まさに「米軍による主権侵害」の事例だ。

在日米軍はツイッターを駆使して、日本で全国的な在日米軍や日米地位協定に対する批判が盛り上がらないよう、不都合な真実をまるでなかったように演出しているのである。

しかし、LCAC夜間訓練は126日にも実施され、『毎日新聞』は29日に同問題をひきつづき取り上げた。CH53Eも高江に続いて1213日、同じ沖縄県の宜野湾市普天間第二小学校の校庭に上空から重さ77キロの窓を落下させた。違反や事故が繰り返し起こる状況では、ツイッターによる情報戦略にも限界があろう。

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